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		  人生の歌 #1〈人はみな馴れぬ齢を生きているユリカモメ飛ぶまるき曇天〉(永田紅『日輪』)
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		   人生の歌 #2〈人生が何度あっても間違えてあなたに出会う土手や港で〉(千種創一『千夜曳獏』)
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		   人生の歌 #3〈「人生は苦しい」(たけし)「人生はなんと美しい」(故モーツァルト)〉(永井祐『日本の中でたのしく暮らす』)
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		   人生の歌 #4〈問題に取り組むよりも問題を忘れることで生きのびてきた〉(工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』)
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		   人生の歌 #5〈生きることすべてが予感じみている栞ははじめから挟まれて〉(鈴木晴香『心がめあて』)
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		   人生の歌 #6〈質問に過ぎない生を生きながら捨ててしまった片方の生〉(山崎聡子『青い舌』)
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		   人生の歌 #7〈産むことと死ぬこと生きることぜんぶ眩しい回転寿司かもしれず〉(柴田葵『母の愛、僕のラブ』)
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		   人生の歌 #8〈生きることの反対は死ぬことぢやない休むこと夕焼の向うへ〉(荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』)
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		   人生の歌 #9〈缶で飲むアクエリアスのおいしさを懐かしがって死んじゃうんかね〉(岡野大嗣『音楽』)
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		   人生の歌 #10〈だれひとり殺さずだれにも殺されず生き抜くことができますように〉(吉岡太朗『世界樹の素描』)
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		   人生の歌 #11〈運転手も家族もみんな立っている人生ゲームの外車の静けさ〉(笹公人『念力ろまん』)
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		   人生の歌 #12〈雨宿りやめる決意を君はする止んだのか濡れる気かは知らない〉(山田航『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』)
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		   人生の歌 #13〈幸福でありつづけなければならないとそもそこからが不幸の証し〉(林和清『去年マリエンバードで』)
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		   人生の歌 #14〈人生は勝ち負けじゃないと思うけど 水上バスは気持ちがいいな〉(鈴木ちはね『予言』)
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		   人生の歌 #15〈「大吉が出るまで引けばいいじゃない諦めたら試合終了なんでしょ」〉(上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』)
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		   人生の歌 #16〈秋日傘つつと回してここにいるわたしはわたしの地軸でいいよ〉(toron*『イマジナシオン』)
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		   人生の歌 #17〈秋だけど春を感じる風の中いまだ世界に慣れてはいない〉(笹川諒『水の聖歌隊』)
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		   人生の歌 #18〈死ねって叫びたいとき逆に生きろって叫べば商店街に春風〉(小坂井大輔『平和園に帰ろうよ』)
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		   人生の歌 #19〈バスの来る方ばかり見てバスの行く方を私は見ていなかった〉(木下龍也『つむじ風、ここにあります』)
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		   人生の歌 #20〈若き日の問ひは大方消え去りぬ答なきまま 散りゆく雲よ〉(春日いづみ『地球見』)
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		   人生の歌 #21〈もうたりひんことをかぞえるひまはない / このひとたちと生きていきます〉(今橋愛『としごのおやこ』)
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		   人生の歌 #22〈手水舎にみずはあふれて祈りとは生きたこと、生きつづけたいこと〉(鯨井可菜子『アップライト』)
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		   人生の歌 #23〈生まれたくなかったなんて思わずに生きてこられたという僥倖〉(水野葵以『ショート・ショート・ヘアー』)
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		   人生の歌 #24〈生きたいと思えるようになるまでは生きると決めて膨らます肺〉(島楓果『すべてのものは優しさをもつ』)
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		   人生の歌 #25〈「幸せに暮らしましたが死にました。けれど死ぬまで幸せでした」〉(木下侑介『君が走っていったんだろう』)
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		   人生の歌 #26〈お茶筒がふすりと閉まる瞬間もいつか死ぬって信じきれない〉(櫻井朋子『ねむりたりない』)
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		   人生の歌 #27〈進むため選ばなかった道の分豊かになるのが人生である〉(犬養楓『救命』)
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		   人生の歌 #28〈運命は自ら開くものとして黙って受けるものは宿命〉(岡部桂一郎『坂』)
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		   人生の歌 #29〈また爪の半月ほどの後悔をしてゆくだろうきっと明日も〉(小島なお『乱反射』)
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		   人生の歌 #30〈駅前でもらうティッシュは二つまで もてる荷物で生きてゆきます〉(高田ほのか『ライナスの毛布』)
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		   人生の歌 #31〈雷龍の国にてしのぐ霧雨の、此の人生が一度しかない〉(光森裕樹『鈴を産むひばり』)
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		   人生の歌 #32〈たった今明らかなことはただひとつこの二十年ほどを死んではならぬ〉(永田淳『1/125秒』)
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		   人生の歌 #33〈ひぢまくらして客を待つ信楽の狸もぐわんばらないを主義とす〉(吉岡生夫『草食獣 隠棲篇』)
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		   人生の歌 #34〈押ボタン式信号と気付かずにここで未来をじっと待ちます〉(松村正直『駅へ』)
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		   人生の歌 #35〈どのときが思い出になるか知らずあと三キロを歩くと決めて〉(花山周子『屋上の人屋上の鳥』)
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		   人生の歌 #36〈グラサンに映る雲、虹、時雨、雪。なにもしないままの思春期が終わる〉(しんくわ『しんくわ』)
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		   人生の歌 #37〈生まれ変はつてもサラリーマンであるやうな冬空の下にバスを待ちをり〉(田村元『昼の月』)
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		   人生の歌 #38〈咲き誇るシクラメン見ゆこの世には主役となれる人生もある〉(佐藤モニカ『夏の領域』)
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		   人生の歌 #39〈理解されなくてもいいのだ生きている時間はそんなに長くないから〉(川本千栄『樹雨降る』)
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		   人生の歌 #40〈見てごらんこの青い空まっさきに会いたい人に会いに行くべし〉(馬淵のり子『そっと置くもの』)
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		   人生の歌 #41〈窓枠のかたちの届く距離が日々変化して人生はおもしろい〉(虫武一俊『羽虫群』)
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		   人生の歌 #42〈あなたはあなたの脳と生きつつ地下鉄ですこし他人の肩にもたれた〉(平岡直子『みじかい髪も長い髪も炎』)
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		   人生の歌 #43〈「時間」にはこまごま記憶がたたまれてどのひとつにも悔いが添ふなり〉(池田はるみ『亀さんゐない』)
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		   人生の歌 #44〈両親が両脇に居てくれることこんなにも親不孝な幸〉(笹本碧『ここはたしかに 完全版』)
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		   人生の歌 #45〈僕に見えるこの僕みたいな人生をあなたなら続けられたんですか〉(平出奔『了解』)
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		   人生の歌 #46〈ショートケーキを箸もて食し生誕というささやかなエラーを祝う〉(内山晶太『窓、その他』)
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		   人生の歌 #47〈雨はふる、降りながら降る 生きながら生きるやりかたを教へてください〉(藪内亮輔『海蛇と珊瑚』)
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		   人生の歌 #48〈けふよりあすへ疲労はほそき橋として架かる その橋を渡りはじめつ〉(鈴木加成太『うすがみの銀河』)
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		   人生の歌 #49〈青春をかけて作りし筋肉でトイレの水を運ぶ人生〉(矢部雅之『友達ニ出会フノハ良イ事』)
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		   人生の歌 #50〈ふざけあう言葉のひとつひとつから明日の生まれることがいとしい〉(田中ましろ『かたすみさがし』)
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		   人生の歌 #51〈一日が過ぎれば一日減つてゆくきみとの時間 もうすぐ夏至だ〉(永田和宏『夏・二〇一〇』)
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		   人生の歌 #52〈誰ひとりきみの代わりはいないけど上位互換が出回っている〉(宇野なずき『最初からやり直してください』)
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		   人生の歌 #53〈ねばならない、ねばならないと唱えながら歩くのはもうやめると決めつ〉(中沢直人『極圏の光』)
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		   人生の歌 #54〈今日という日もまた栞 読みさしの人生という書物にすれば〉(萩原慎一郎『滑走路』)
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		   人生の歌 #55〈何者かにならなきゃ死ぬと思ってた30過ぎても終わらない道〉(岡本真帆『水上バス浅草行き』)
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		   人生の歌 #56〈おまえは生きているうち一度でも空を見たかと問う鶏肉に〉(佐佐木定綱『月を食う』)
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		   人生の歌 #57〈湯気のたつごはんがあって父がいてあなたにたまに逢えて 生きてる〉(藤島秀憲『すずめ』)
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		   人生の歌 #58〈いのちとは未生の無から死後の無へわたる吊橋 ぐらぐらとせり〉(小島ゆかり『希望』)
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		   人生の歌 #59〈生活というのはわからないけれどあなたと水を分かち合うこと〉(土岐友浩『Bootleg』)
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		   人生の歌 #60〈伸びしろがある人間になりたいと伸びしろばかり伸ばした日々は〉(堀合昇平『提案前夜』)
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		   人生の歌 #61〈生きててもつまらないから生きている 室蘭は焼き鳥の街だし〉(松木秀『5メートルほどの果てしなさ』)
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		   人生の歌 #62〈辛い一生と楽しい生活の間には人間関係というものがある〉(生沼義朗『関係について』)
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		   人生の歌 #63〈死ぬ気持ち生きる気持ちが混じり合い僕らに雪を見させる長く〉(堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る』)
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		   人生の歌 #64〈幸せは前借りでありその猫を看取ってやっと返済できる〉(仁尾智『仁尾智猫短歌集 いまから猫のはなしをします』)
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		   人生の歌 #65〈僕らは朝に牛乳を飲む 骨壺に収めるための骨を育てる〉(田村穂隆『湖とファルセット』)
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		   人生の歌 #66〈レプリカを何体も置きあとずさるさういふことだ生きのびるとは〉(山田富士郎『羚羊譚』)
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		   人生の歌 #67〈あなたより先に死にたしそののちのあなたの死後にふたたびを死ぬ〉(大森静佳『ヘクタール』)
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		   人生の歌 #68〈かみの毛をうかべたような雲がありここからはずっとチャンスなんだ〉(我妻俊樹『カメラは光ることをやめて触った』)
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		   人生の歌 #69〈盛り上がり水くづれたり 老いながらまたあたらしく明日へ運ばる〉(横山未来子『水をひらく手』)
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		   人生の歌 #70〈手をふれてさびしいふたり何にでもなれる万能細胞のやうで〉(魚村晋太郎『バックヤード』)
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		   人生の歌 #71〈ぼろぼろと剝がれて落ちてゆくものを育て続けた日もあったはず〉(安藤美保『水の粒子』)
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		   人生の歌 #72〈たましいを紙飛行機にして見せてその一度きりの加速を見せて〉(服部真里子『遠くの敵や硝子を』)
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		   人生の歌 #73〈映画にはなれない今日が好きだった 卓にふくらみたるティーコジー〉(笠木拓『はるかカーテンコールまで』)
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		   人生の歌 #74〈春がまだひたすら続く日々でした老婆になった我そこに置く〉(松平盟子『うさはらし』)
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		   人生の歌 #75〈人生をある朝とつぜん理解するブロッコリーが嫌ひだつたと〉(沢田英史『異客』)
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		   人生の歌 #76〈よりどなく生くるといへど日が差せば冬あたたかきひかり身に浴ぶ〉(坂出裕子『日高川水遊』)
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		   人生の歌 #77〈かがまりてもやしのひげ根をとる厨 些事にこだはる日は平和なれ〉(蒔田さくら子『標のゆりの樹』)
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		   人生の歌 #78〈ビル風に髪がおどってくれたからとてもちいさな決心をした〉(安田茜『結晶質』)
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		   人生の歌 #79〈今日眠るふとんあります明日食べるパンもあります祈りのゆびも〉(岸原さや『声、あるいは音のような』)
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		   人生の歌 #80〈もう少しゆけばかならず楽になる楽になるとぞ歩み来たれる〉(内藤明『薄明の窓』)
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		   人生の歌 #81〈本のない本棚皿のない戸棚そんなところに長く長く居た〉(なみの亜子『鳴』)
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		   人生の歌 #82〈眼前の苦を遁れたき我といふ弱気を凌駕する我のあれ〉(水沢遙子『空中庭園』)
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		   人生の歌 #83〈逃るるも直に対うもおごそかに一生のこととなりて消えざる〉(高倉レイ『薔薇を焚く』)
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		   人生の歌 #84〈ゆらゆらと日々は手吹きガラスのやうに揺れてをります不確かなまま〉(知花くらら『はじまりは、恋』)
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		   人生の歌 #85〈何もなき一日の何もなき川を身を乗り出して子ら眺めをり〉(梶原さい子『リアス/椿』)
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		   人生の歌 #86〈編み物の初めのように先が長い二人静かに前を見ている〉(竹内亮『タルト・タタンと炭酸水』)
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		   人生の歌 #87〈眠りたくなつて眠つて目が覚めて食べる排泄する歩き出す〉(石川美南『架空線』)
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		   人生の歌 #88〈なにかに負けてゐるかのやうになにかを嘲笑つてゐるかのやうに夏を過ごした〉(染野太朗『初恋』)
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		   人生の歌 #89〈負ケ犬ニナルナとばかり教えられ負ける強さを知らずに育ち〉(大井学『サンクチュアリ』)
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		   人生の歌 #90〈美しい日没があすもあるのかと問う声にえぐられている日あり〉(百々登美子『盲目木馬』)
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		   人生の歌 #91〈今日もまた前回までのあらすじを生きてるみたい 雨が止まない〉(『風のアンダースタディ』)
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		   人生の歌 #92〈(はじめから間違いだとしてひきつづき間違うとしても)生きなければね〉(野樹かずみ『路程記』)
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		   人生の歌 #93〈棒切れかなにかのごとき一生も棒切れに長さありてわれ泣く〉(渡辺松男『歩く仏像』)
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		   人生の歌 #94〈死ぬまでにせぬこと出来ぬままのこと考へてゐる箸洗ひつつ〉(近藤かすみ『雲ケ畑まで』)
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		   人生の歌 #95〈ノー・ウンチ、ノー・ライフ、ああ、この先の百年をウンチせよかし、おまへ〉(大松達知『ゆりかごのうた』)
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		   人生の歌 #96〈もう若くないと思えど死には若き齢を生きて朝鵙に遇う〉(吉川宏志『鳥の見しもの』)
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		   人生の歌 #97〈生くるとは慣れぬことがらに出会ふこと熟していくこと羊雲みあぐ〉(秋山佐和子『豊旗雲』)
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		   人生の歌 #98〈おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃって生きてたらはちゃめちゃに光ってる夏の海〉(青松輝『4』)
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		   人生の歌 #99〈三十分ゴルフの話ばかりして三十分減るおれの人生〉(ユキノ進『冒険者たち』)
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		   人生の歌 #100〈勝ち負けを決めないことも負けかもと思う あなたの下着を吊るす〉(岡崎裕美子『わたくしが樹木であれば』)
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		   人生の歌 #101〈長生きができたらいいな ひまわりの黄は漆黒にあんがい似てるね〉(早坂類『風の吹く日にベランダにいる』)
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		   人生の歌 #102〈迷いたるわれの耳へと風の吹く正しいことを選ぶのではない〉(江戸雪『駒鳥』)
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		   人生の歌 #103〈散らかしたまま書いている人生に誤字も脱字もそのままにある〉(小川佳世子『水が見ていた』)
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		   人生の歌 #104〈深夜ラジオの天気予報を聴きをれば今日はたしかに昨日のつづき〉(小川真理子『母音梯形』)
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		   人生の歌 #105〈人生を笑い飛ばして去っていく……わけにもいかず草抜いている〉(大下一真『即今』)
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		   人生の歌 #106〈約束をしないつもりで生きてきたでもあの人とは約束したい〉(九螺ささら『ゆめのほとり鳥』)
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		   人生の歌 #107〈満月が「たとえ一分一秒も他人のためには使うな」と言う〉(谷村はるか『ドームの骨の隙間の空に』)
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		   人生の歌 #108〈われら明日はなに見るならむひたひたと「時」の渚を波打ちつづく〉(雨宮雅子『昼顔の譜』)
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		   人生の歌 #109〈かなしみが或る臨界を過ぎしときひとは笑ふといふ真実は〉(川本浩美『起伏と遠景』)
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		   人生の歌 #110〈水飲めばみづのうちよりひと生れてわれとなりにき 水消えにけり〉(川野芽生『Lilith』)
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		   人生の歌 #111〈風景のやうに己れの一生をながめてはならぬとかくは思へど〉(小笠原和幸『定本 春秋雑記』(セレクション歌人『小笠原和幸集』))
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		   人生の歌 #112〈「わたしそこはこだはつてないから」と言ふときのこだはりをこそ恐怖と思へ〉(勺禰子『月に射されたままのからだで』)
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		   人生の歌 #113〈少し軽く生きんとおもう餡ぬきの饅頭のような雲浮くかなた〉(杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』)
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		   人生の歌 #114〈貧しさがデフォルトであるわたしたち笑えと言われるままに笑うよ〉(柳澤美晴『一匙の海』)
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		   人生の歌 #115〈朝戸出の風硬くして今日のわれ昨日のわれを引き継ぎにゆく〉(島田幸典『駅程』)
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		   人生の歌 #116〈生きてゐる間はせめて思ひたい他の生き方あるかもしれぬ〉(香川ヒサ『ヤマト・アライバル』)
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		   人生の歌 #117〈時が止まればいい さう思はなくなつてずいぶん歩いてしまつた〉(大森益雄『歌日和』)
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		   人生の歌 #118〈理由などいつもあとからついてくるなだらかにうねる道のかたへを〉(三島麻亜子『水庭』)
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		   人生の歌 #119〈春だから生きているのかいないのか曖昧にしていい春だから〉(谷川電話『深呼吸広場』)
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		   人生の歌 #120〈卓上に紙屑がひとつあるゆゑにけふの日が否定されたるやうな〉(小島熱子『りんご1/2個』)
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		   人生の歌 #121〈楽になる時はあるときふっとくる あるときふっとはいつやってくる〉(中津昌子『風を残せり』)
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		   人生の歌 #122〈耳から生まれ耳に死にゆく人間の途中の耳とふれつつおもふ〉(河野美砂子『無言歌』)
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		   人生の歌 #123〈夕闇に紛れゆくときゐなくてもゐてもゐなくてもよいわれとはなりぬ〉(大室ゆらぎ『夏野』)
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		   人生の歌 #124〈これまでの十の幸運十の不運かぞへあげつつ眠りにつかむ〉(小池光『サーベルと燕』)
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		   人生の歌 #125〈うしなへば自由になれる きつかけは些細で後はとつぴんしやん、と〉(西橋美保『うはの空』)
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		   人生の歌 #126〈途方もなく未来のことを託される前売り券が重たくて春〉(塚田千束『アスパラと潮騒』)
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		   人生の歌 #127〈ただ生きてゆくことだけを意識して生きる折り畳み傘を持たずに〉(川島結佳子『感傷ストーブ』)
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		   人生の歌 #128〈自賛する言葉は卑しかりしかどそれにしも支へらるる生もありなむ〉(大辻隆弘『汀暮抄』)
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		   人生の歌 #129〈いのりといふもろき柱に身を寄する死からながむる生短くて〉(森井マスミ『まるで世界の終りみたいな』)
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		   人生の歌 #130〈日曜のひとりぼっちは思いのほか幸せなんだ 歯磨きはしない〉(カン・ハンナ『まだまだです』)
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		   人生の歌 #131〈とは言えど走って走って走り抜く若さ眩しと思うときあり〉(三枝昻之『遅速あり』)
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		   人生の歌 #132〈トーストを朝なさな置く丸皿を洗はず捨てるやうに生きたい〉(山木礼子『太陽の横』)
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		   人生の歌 #133〈したいことたくさんあるけどわたしって「したいね」「したいね」でいいみたい〉(伊藤紺『気がする朝』)
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		   人生の歌 #134〈ちょっと良いポン酢を買えば良い帰路で春の宵など俯瞰しながら〉(小俵鱚太『レテ/移動祝祭日』)
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		   人生の歌 #135〈ひとりなり。一夏の読点として階段にひいやりと座れば〉(駒田晶子『銀河の水』)
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		   人生の歌 #136〈耳朶をさわられているただじっとこの子が眠るまでの生け贄〉(山添聖子・山添葵・山添聡介『じゃんけんできめる』)


 
	