おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃって生きてたらはちゃめちゃに光ってる夏の海
青松輝『4』
青松輝の第一歌集『4』(2023年)に収められた一首です。
“あなたはどのように生きていますか? あなたの生き方をオノマトペで30文字以内で表現してください。”
もしこのような質問をされたら、一体何と答えるでしょうか。
掲出歌は、まさにどのように生きているかをオノマトペを巧みに使って表現している歌だと思います。
「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃって生きてたら」は、具体的なことは何も述べられていません。「おりゃ」を6回繰り返しており、いろんな面から生き方を表現するというよりも、同じ言葉を繰り返す一点集中的な生き方の表現になっていると思います。
ただ具体性がないからといって、どのように生きているかがわからないかというとそうでもなく、不思議と主体の生き方の感じというのは伝わってきます。
それは、決して器用ではないけれど、目の前で起こる人生のイベントに懸命に向かってひとつずつこなしていく、そんな主体の姿が浮かんでくるのです。「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ」には、まるで敵を倒す勇者のように、課題をつぶしていくひとりの人間の様子が表れているのではないでしょうか。
さて、そのように生きていたら、眼前に広がる夏の海が光っているのに気づきました。しかも「はちゃめちゃ」に光っているのです。それはとても輝かしい光景なのでしょう。
「おりゃおりゃ」と「はちゃめちゃ」の似たような見た目と似たような音の響きも相乗効果を生んでいると思います。
この歌からは、マイナスの要素はほとんど感じられず、主体の心のベクトルは前方を向いていて、そのプラスイメージがオノマトペから、よく伝わってくる一首ではないでしょうか。
一度聞いたら忘れられない一首で、印象に残る歌だと感じます。