人生の歌 #45

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人生の短歌

僕に見えるこの僕みたいな人生をあなたなら続けられたんですか
平出奔『了解』

平出奔の第一歌集了解(2022年)に収められた一首です。

この歌は詞書を多用した「了解」という一連にありますが、この一連はSNSでのやりとりを通じての相手との関わりが描かれています。

掲出歌の「あなた」はその相手を指すのでしょうが、この歌は一連における関わりに限定せず、普遍的な一首として捉えることができるのではないでしょうか。実は、掲出歌の次の一首は〈そのときのことは灰色  僕は誰を 誰をあなたと呼んだんだろう〉であり、「あなた」は特定の「あなた」ではないのかもしれません。

さて「僕に見えるこの僕みたいな人生」というのが少しわかりにくい表現だと思います。もし初句の「僕に見える」がなかったとしたら、「この僕みたいな人生をあなたなら続けられたんですか」となり、”僕が歩んできた(必ずしも平穏とはいえないような)人生を、あなたなら続けられたのですか”といった意味合いになるでしょう。つまり主体の側の人生についていっているのです。

しかし「僕に見える」がついた場合、果たして上のような捉え方ができるのでしょうか。

「僕に見える」という初句がつくことで、この「人生」は主体の側の人生というよりも「あなた」の側の人生を指しているのではないかと思うのです。”僕のように思える、僕にとても似ている(あなたの)人生を、あなたは続けられたのですか”という意味合いになるのではないでしょうか。

「僕」の人生と「あなた」の人生に、「僕」はどこか共通点を探しているのかもしれません。そんな似たような人生が二つあるとして、「僕」は続けられるかどうかはわからないけれども、「あなた」は続けられるのですか、と問うているようにも思います。

もちろん「僕」の人生と「あなた」の人生は同じであるはずはありませんし、「僕」が感じている「僕」の人生と「あなた」が感じている「僕」の人生も全く同じではないでしょうし、「僕」が感じている「あなた」の人生と「あなた」が感じている「あなた」の人生もイコールではないでしょう。

しかし、人はどこか他者の人生に、自分の人生の基準のようなものを照らし合わせてしまうものではないでしょうか。そのように共通項や比較を通して、人生を見つめ、探りさぐりしながら生きているのかもしれません。

正直、掲出歌はうまく読めないところもありますが、「あなたなら続けられたんですか」というフレーズが強くつよく心に迫り続け、とても印象に残る一首です。

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