人生の歌 #29

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人生の短歌

また爪の半月ほどの後悔をしてゆくだろうきっと明日も
小島なお『乱反射』

小島なおの第一歌集乱反射(2007年)に収められた一首です。

後悔をしない人生を送ることができる人はごく稀かもしれません。

多かれ少なかれ、生きていれば後悔というものはつきまとうものではないでしょうか。ただ同じ後悔をするのであれば、「やらなかった後悔」ではなく「やった後悔」をしたいものです。

よくいわれることですが「やらなかった後悔」は日増しに大きくなるけれども、「やった後悔」は日増しに小さくなっていきます。そうであれば、後悔は後悔でも「やった後悔」を目指したほうがいいのではないかと思います。

さて掲出歌は、後悔について詠った歌ですが、その後悔の大きさの喩えが面白い一首です。

「爪の半月ほどの後悔」と詠われています。爪の半月とは、爪の根元にある白い部分を指しますが、人によって半月の大きさはそれぞれ違います。

ただ半月は普段あまり意識しない部分であり、相対的に小さくわずかなものの喩として登場しているように感じます。

通常、後悔というのは”過去”に対して抱く感情であり、”未来”に対して抱くものではありません。しかしこの歌は「明日」つまり未来における後悔を見つめているのです。

また初句の「また」、そして結句の「きっと明日も」の「も」が、明日の一度きりの後悔だけではなく、過去あるいは今日起こった後悔をも想起させます。そしてその後悔はこれから先ずっと繰り返し繰り返し毎日起こっていくような、そんな印象を感じてしまいます。

決して大きくて取り返しがつかない後悔ではありません。「爪の半月ほどの後悔」なのです。けれども、そのような大きさの後悔は日々感じてしまうであろうと詠われているのです。

このように感じる根本的な心の状態はどのようなものなのでしょうか。なぜ後悔を繰り返し感じるのか、その理由は明確にされてはいません。

冒頭に触れた話に戻れば、この歌に登場する「後悔」は、「やらなかった後悔」なのか、それとも「やった後悔」なのか、一体どちらなのでしょうか。その判断は読者に委ねられているのかもしれませんが、どちらであるかによって一首のイメージは大きく変わってくるでしょう。

後悔とはプラスなのかマイナスなのか、それは場面や状況により異なるでしょうが、後悔を通して、改めて生きていくということが浮き彫りになる、そんな一首だと感じます。

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