人生の歌 #26

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人生の短歌

お茶筒がふすりと閉まる瞬間もいつか死ぬって信じきれない
櫻井朋子『ねむりたりない』

櫻井朋子の第一歌集ねむりたりない(2021年)に収められた一首です。

生まれてきた以上、人はいつか死にます。けれどもいつ死ぬかは、死ぬ瞬間までわかりません。

もちろん平均寿命といった指標があるため、何となく80歳~90歳くらいまで生きるのではないかと考えてしまうケースが多いでしょう。

しかし、この数字はあくまで平均であり、誰もがこの年齢まで生きるというわけではありません。平均寿命より長く生きる人もいれば、早くに死んでしまう人もいます。

さて掲出歌は、「いつか死ぬ」ということが「信じきれない」と詠われています。信じられないではなく「信じきれない」というところもポイントでしょう。人はいずれ死ぬということはわかっていても、その死が今の自分に引きつけられないでいるということだと思います。

いつ死ぬかわからないがゆえに、平均寿命のような数値によって死期を80歳~90歳に何となく想像してしまってはいないでしょうか。つまり、死の瞬間を遠くに追いやってしまっているのではないでしょうか。

死の瞬間が遠ければ遠いほど、「いつか死ぬ」ということを信じきることは難しいのかもしれません。

「お茶筒がふすりと閉まる瞬間」というのは、とてもリアリティのある瞬間です。空気が漏れるような感じが「ふすり」というオノマトペで的確に表現されていると思います。

お茶筒が閉まる瞬間はどこか終焉を思わせる瞬間ではありますが、このような日常の各場面には”終わり”を想起させる、あるいはかすかに感じさせる瞬間というものが多数存在しているのではないでしょうか。

そのような何気ない動作や状態から、死というものに意識が及んだとしても、それは身近な死ではなく、遠くの死を想像しているだけなのかもしれません。それが「いつか死ぬって信じきれない」という表現に表れているように感じます。

死はいつか訪れるものだとしても、それがいつかわからない限り、本当の意味で死を信じきることはできないのかもしれないと、この一首から改めて考えさせられます。

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