人生の歌 #65

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人生の短歌

僕らは朝に牛乳を飲む 骨壺に収めるための骨を育てる
田村穂隆『湖とファルセット』

田村穂隆の第一歌集うみとファルセット(2022年)に収められた一首です。

牛乳を飲めば背が伸びる、骨が強くなると子どもの頃にいわれてきた人は多いのではないでしょうか。

牛乳の味が好きな人は牛乳を飲むことが苦になりませんが、あまり好きではない人は背が伸びたり、骨が強くなったりすることを期待して無理して飲んでいた人もいるでしょう。

掲出歌は「骨を育てる」ために牛乳を飲んでいるという歌ですが、驚くのは「骨壺に収めるための骨を育てる」と詠われていることです。

なぜ牛乳を飲むのか。それは骨を育てるため。ではなぜ骨を育てるのか。それは今後の健康のため。というのが牛乳を飲む一般的な理由でしょう。いってみれば、牛乳を飲むことは”いいこと”のためであり、牛乳を飲むことには意味があり、その行為にマイナスの要素はありません。

しかしこの歌では「骨壺の収めるための」と表現されることによって、牛乳を飲むことが途端に無意味なことのように感じられるのです。

「骨を育てる」のは健康や成長のためであり、骨壺に収めるときにしっかりとした骨にしたいと思って育てているわけではありません。

骨を育てるということがもつ何となくの”いいイメージ”を、改めて問い直している歌であり、読み手はハッとさせられます。

牛乳を飲むことが結果として骨壺に収めるときの骨を丈夫にしたという順番であれば、それほど違和感を感じません。しかし、「骨壺に収めるための」という表現によって、牛乳を飲む行為の目的として先に「骨壺」つまり死を見据えた動機があるような気配がこの歌からは感じられ、それこそが読み手に気づきと驚きを与えてくれる一首なのだと思います。

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