人生の歌 #50

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人生の短歌

ふざけあう言葉のひとつひとつから明日の生まれることがいとしい
田中ましろ『かたすみさがし』

田中ましろの第一歌集かたすみさがし(2013年)に収められた一首です。

今日の世界、あるいは明日の世界をつくりあげていく基になるものは何でしょうか。

今日、明日という世界はあらかじめ用意されたものではありますが、意識的にその世界を捕まえにいかないと、今日や明日という世界はただの箱のようなものとしてしか存在し得ないのではないでしょうか。

たとえば「明日」という世界をかたちづくるということは、すなわち明日という枠組をどう認識するかということと同じことなのではないかと思います。

自ら「明日」を認識しようとアクションを起こさなければ、「明日」という世界はただの空虚な箱のような存在のままとなるでしょう。

世界を認識するには「言葉」が必要です。言葉でいい表せないものは、存在しないといっても過言ではないでしょう。いってみれば、言葉がなければ世界を認識することはできず、言葉があるからこそ、その世界は存在しているともいえるのではないでしょうか。

掲出歌は、言葉から明日が生まれることをいとしいと感じている歌ですが、その言葉が堅苦しい言葉ではなく、「ふざけあう言葉」であるところに、明日が生まれるに至る経過にわくわくするような感情があふれでてきているように感じます。

それも特定のひとつの言葉から明日が生まれるのではなく、たくさんの「ひとつひとつの言葉」から明日が生まれるというのです。無数の明日が生まれるあるような印象もありますし、同時にそれら無数の小さな明日が集まって、ひとつの明日をかたちづくっていくような感じもします。

「明日」をいとしんでいるのではなく、「明日の生まれること」をいとしんでいるところも見逃せないポイントでしょう。

歌意として、主体と誰かが明日の予定を話し合っていて、その予定から明日の一日の行程や輪郭が立ち上がってくるという、どちらかといえば日常的な場面のようにも採れると思います。しかし、そのように採るよりも上に述べたように、言葉そのものから明日そのものが生まれるということを詠っていると採った方が、明日という世界が立ち上がるダイナミックさのようなものを存分に味わるのではないかと感じます。

人は言葉なしに生きていくことは難しいのではないか、言葉があるからこそ世界に向き合うことができるし、その世界を生きることができるのではないか、そんなことを考えさせられる一首で印象に残ります。

言葉
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