人生の歌 #15

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人生の短歌

「大吉が出るまで引けばいいじゃない諦めたら試合終了なんでしょ」
上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』

上坂あゆ美の第一歌集老人ホームで死ぬほどモテたい(2022年)に収められた一首です。

世の中はさまざまな勝負事であふれています。一般的に、勝ち負けはどの時点で決まるのでしょうか。

サッカーやラグビーなど試合時間が決められているスポーツは、試合時間が終了した時点で勝負が決まります。また野球のように、試合時間ではなくイニングの既定回数が終了した時点で勝負が決まるものもあります。

将棋は持ち時間がありますが、持ち時間がなくなっても一手ごとに一分間の時間が与えられ、どちらかの王将を詰んだ時点で勝負が決まります。

このように勝負の決し方はいろいろとありますが、上に挙げた例はルールが決められた競技であるという点で共通しています。

さて、掲出歌はどうでしょうか。

「大吉」とあるので、まずはおみくじを引いている場面と捉えてみましょう。おみくじというのは、年に何回も引くものではないでしょう。初詣にいったときや、何かの記念日、イベントのときなど、運勢を占う意味で引くことが多いのではないでしょうか。

ですから、そのときに引いたおみくじの結果が大吉であれ吉であれ、一旦はその結果を受け入れるのが通常でしょう。もちろん、神社仏閣によりご利益やおみくじの種類が異なるので、旅行などでおみくじの引き巡りを行うということはあるかもしれません。

しかし、おみくじというのは何度も試すものでないからこそ、そこにおみくじの価値があるともいえます。

しかし、この歌はこれに反するように「大吉が出るまで引けばいいじゃない」と詠っています。一回目の結果が大吉ではなかったとしても、何度か引けばやがて大吉の結果を得ることはできるでしょう。

つまり大吉の結果を”勝ち”とするなら、一回目で大吉が出なかったからといってそれは”負け”ではありませんし、大吉が出るまで引き続ければ、必ず”勝ち”につながるのです。

ここまでおみくじの話をしてきましたが、おみくじを引くというのはひとつの例であって、結局この歌は人生全般について詠った歌だと思います。それは「諦めたら試合終了なんでしょ」によく表れているでしょう。

冒頭で勝負が決まる時点について触れましたが、人生という勝負においては試合時間でもなく既定回数でもなく、あきらめたかどうかで勝敗が決するといってもいいのではないでしょうか。

すなわち、あきらめていないうちは試合の途中であり、いつでも”勝ち”になる可能性を残しているのです。”負け”を確定させるのは、自分自身のあきらめただひとつといっても過言ではないでしょう。

たった一度の挑戦であきらめてしまうなんて、とてももったいないことです。大吉が出るまで何度でも挑戦すればいいのです。

この歌は、あきらめずに何度も挑戦すればいいんだよと、読者にストレートに力強く訴えかける一首だと思います。

大吉おみくじ
おみくじの大吉

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