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パンの歌 #1
〈じきに雨やがて戦争ばらばらとクロワッサンは壊れるばかり〉(北山あさひ『崖にて』) -
パンの歌 #2
〈手に持ったパンが腕より長いこと抱きしめてはくれないのだパンは〉(鈴木晴香『心がめあて』) -
パンの歌 #3
〈灯の下にとりどりのパン集まりて神の十指のごとく黄昏〉(楠誓英『禽眼圖』) -
パンの歌 #4
〈食パンをキャンバスにする画家らしい作品は基本食べちやふらしい〉(山田航『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』) -
パンの歌 #5
〈ぴったりに無塩バターを切れるのは「パンおいしいよ」の手紙のおかげ〉(ほんだただよし『パパはこんなきもち。~こそだてたんか~』) -
パンの歌 #6
〈フジパン本社だが春昼にパンを焼く匂ひでここは有名になる〉(荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』) -
パンの歌 #7
〈この夕べ抱えてかえる温かいパンはわたしの母かもしれない〉(杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』) -
パンの歌 #8
〈つぶれてたクリームパンを鞄から出す今日ずっとたのしかったな〉(岡野大嗣『音楽』) -
パンの歌 #9
〈ばかだらけです神様と告げ口をする 骨のないパンこんなにうまい〉(雪舟えま『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』) -
パンの歌 #10
〈投げこめばパンくずがよわい同心円を描いて水鳥がそれを壊して〉(鈴木ちはね『予言』) -
パンの歌 #11
〈パンを触る前に石鹸で手を洗う土曜は生きているって思う〉(上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』) -
パンの歌 #12
〈好きそう、とあなたが買ってきてくれるパンことごとくわんぱくなパン〉(toron*『イマジナシオン』) -
パンの歌 #13
〈蒸しパンをちぎったあとの指先を押し付ける、わけでもなく触れる〉(笹川諒『水の聖歌隊』) -
パンの歌 #14
〈食パンを山と麓に切り分けて夫婦二人のサンドイッチ成る〉(鯨井可菜子『アップライト』) -
パンの歌 #15
〈トースター開けたら昨日のトーストが入ったままでゆっくり閉じる〉(島楓果『すべてのものは優しさをもつ』) -
パンの歌 #16
〈ハムレタスサンドは床に落ちパンとレタスとハムとパンに分かれた〉(岡野大嗣『サイレンと犀』) -
パンの歌 #17
〈芥子の実の乗りたるあんぱん一つ買うたったそれだけの倖せもある〉(岡部桂一郎『一点鐘』) -
パンの歌 #18
〈老人は自転車で来て鳩たちにまぶしきパンの耳を降らせる〉(魚村晋太郎『銀耳』) -
パンの歌 #19
〈鋭角の切断面を鮮やかにさらしてサンドイッチがならぶ〉(松村正直『駅へ』) -
パンの歌 #20
〈白パンにバターとジャムを塗ることが幸せである行為 はつなつ〉(小島なお『乱反射』) -
パンの歌 #21
〈水仙の薫る小路を抜けてゆく朝の焼きたてコッペパンまで〉(藤島秀憲『すずめ』) -
パンの歌 #22
〈メロンパンだつた破片をテーブルの隅に集める冬のつとめて〉(田村元『昼の月』) -
パンの歌 #23
〈夫も子も居ぬ昼食のうれしさよ栗入りアンパン薄く頰張り〉(川本千栄『樹雨降る』) -
パンの歌 #24
〈苛立ちをなだめる為の象かなサンドウィッチのフィルムを剝がす〉(堀合昇平『提案前夜』)
【パンの歌】リスト
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