パンの歌 #23

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パンの短歌

夫も子も居ぬ昼食のうれしさよ栗入りアンパン薄く頰張り
川本千栄『樹雨降る』

川本千栄の第三歌集樹雨降る(2015年)に収められた一首です。

この歌で詠われている「うれしさ」は、実感としてよくわかるのではないでしょうか。

主体は「栗入りアンパン」が好物なのでしょう。自分の好物を食べるときは、誰にも邪魔されず、自分の世界に入り込んで味わいたいものです。

ひとり暮らしであれば好きなものを好きなときに食べることができますが、家族がいれば、自分が食べたいものを自分だけが食べることは家族がいない間にする必要も出てきます。

さて「夫も子も居ぬ昼食」の時間を得た主体は、ひとりで「栗入りアンパン」を頬張るのですが、その姿はひとりきりの昼食であるがゆえに訪れる喜びに満ちているように感じます。

食事は、家族や大勢の友達と食べるときの喜びもあれば、ひとりきりだからこそ味わえるおいしさや喜びというものもあるでしょう。この歌では後者の「うれしさ」が滲み出ています。

一点気になる点があるとすれば「栗入りアンパン薄く頬張り」の「薄く」の言葉です。「薄く」というのはどういう状態を指しているのでしょうか。頬張るとは、口いっぱいに食べ物を詰め込む意味合いがあると思いますが、「薄く」というのはこの意味にブレーキをかけるような方向性をもった言葉で、「薄く」と「頬張り」がいまひとつしっくりこない印象があります。

しかし、「薄く」から少しだけ頬張った、あるいは味わいながら頬張ったといった様子を思い浮かべればいいのかもしれません。ひとりきりでガツガツとアンパンを食べるのではなく、栗入りアンパンを味わいながら満足のいく食べ方をしたという状況が「薄く頬張り」に表現されているのではないかと想像してみたのですが、いかがでしょうか。

食事は生きていく上で欠かせないもので、食事が満足にできるかどうかで日々の充実度も変わってくると思います。ときには掲出歌のようなゆったりとした昼食の時間をもってみたいと思わせてくれる一首です。

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