パンの歌 #1

当ページのリンクには広告が含まれています。
パンの短歌

じきに雨やがて戦争ばらばらとクロワッサンは壊れるばかり
北山あさひ『崖にて』

北山あさひの第一歌集崖にて(2020年)に収められた一首です。

クロワッサンは、あまたあるパンの中でも知名度があり、人気のあるパンだと思います。

そして、クロワッサンは、何となく朝食向きのイメージがあります。朝の光が窓から、レースのカーテン越しに降り注いでいる室内。部屋の中央の置かれた木のテーブルの上には、コーヒー・紅茶と、味わいのあるかたちの籠にもられたクロワッサン。まだ焼きたてで、ほかほかしています。籠からクロワッサンをひとつ手にとります。ひと口頬張ると、サクッとした食感があたたかみとともに口の中に広がります。優雅にコーヒー・紅茶を飲む。窓を少し開けると、小鳥の声が聞こえてきます。至福の朝の始まりです。

クロワッサンから、勝手にこのような朝の風景を想像してしまいました。

横道に逸れました。それはさておき、クロワッサンは繊細なパンであるゆえに、食べるときにぼろぼろとパンの破片がこぼれてしまいます。食パンやバゲットのようなしっかりした感じとは違い、繊細さをもったところが特徴のパンなのです。

さて、掲出歌は、世の中が、あるいは時代が、戦争へたちまち傾いていく様と、クロワッサンの崩れやすさとのイメージをつなげている歌でしょう。

上句の「じきに雨やがて戦争ばらばらと」の細切れで畳みかけるようなリズムが、戦争はいつ急に始まっても不思議ではない様子を表現しているようです。

三句の「ばらばらと」という言葉は、初句二句と下句との両方にかかるのでしょう。この三句によって、初句二句の「戦争」が突然始まる様や戦争によっていろいろなものが引き裂かれる様と、下句のクロワッサンがぼろぼろと壊れる様が相互につながれています。

クロワッサンの脆さは、人々の思考や行動がよからぬ方向へ向かうときの状況の脆さを的確に表現していると感じます。「壊れるばかり」の「ばかり」は、もうどうにも止めようがない、ただただ壊れていくのを見ているより仕方ない、そんな状況を想像させるのではないでしょうか。よからぬ方向へ進んでいくとわかっていても、一旦よからぬ方向に動き出してしまったものは、もう止めようがないのかもしれません。

どうせクロワッサンを食べるのであれば、冒頭で触れた風景のように、もっと優雅に、もっと純粋に楽しく味わいたいと思います。しかし、掲出歌のクロワッサンはそのような場面とはかけ離れたところにおけるクロワッサンなのでしょう。

特に上句のリズム感と、クロワッサンの脆さのイメージが印象に残る一首です。

クロワッサン
クロワッサン
¥2,200 (2022/10/15 10:14時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

♪ みなさまの応援が励みになります ♪


俳句・短歌ランキング

ブログランキング・にほんブログ村へ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次