パンの歌 #10

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パンの短歌

投げこめばパンくずがよわい同心円を描いて水鳥がそれを壊して
鈴木ちはね『予言』

鈴木ちはねの第一歌集予言(2020年)に収められた一首です。

水鳥が出てくるので、川か池にパンくずを投げ込んだときの情景でしょう。

パンくずのような比較的軽いものでも、水面に投げ込まれれば弱いながらも波紋を生じます。「よわい同心円を描いて」という表現が、パンくずを中心とした波紋が徐々に広がっていく様を過不足なく的確に表しています。

パンくずを追い求めた水鳥は、そんな同心円をたちまち壊してしまうのですが、「描いて」「壊して」といういい方から、同心円の発生と破壊が繰り返される様子が伝わってきます。

「投げ込めば」という初句も一見何ということのないように見えますが、実は工夫があり、この段階ではまず何を投げ込んだのかが読み手はわからず、想像します。そしてその後にパンくずだったと気づくという展開になっているのです。この語順によって、投げ込むという動作も生き生きと伝わってきますし、パンくずへ焦点がより収斂していくようにも思います。

歌集において、掲出歌の次の歌もパンが登場します。

ひとしきり鴨に餡パンあげたあとで餌付け禁止の看板を見る

同じ場面を詠っていたと仮定すると、水鳥は「鴨」で、パンくずは「餡パン」のパンくずだったということになります。パンくずを投げ込んでいたときは気づかなかったけれども、後で餌付け禁止だったとわかるという、何ともおかしみにある歌です。

食べるためのパンではなく、餌としてのパンが詠われた歌として注目しました。

波紋
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