【直線・曲線の歌】リスト

〈さびしさを知る直線と曲線が交差しながら明けてゆく空〉（松村正直『駅へ』）

〈曲線どれもがあざやかになる春先の曲線として妻を見てゐる〉（荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』）

〈まっすぐな道を見るとき直線を腸からのどのあたりに感ず〉（雪舟えま『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』）

〈使い捨てコンタクトレンズひからびて記憶のカーブをぐんにゃり描く〉（俵万智『チョコレート革命』）

〈水引を指でなぞれば曲線の果てにとつぜん取り残されて〉（櫻井朋子『ねむりたりない』）

〈丁寧に落ち葉を吸っていく機械が曲線の多いフォルムをしていた〉（鈴木ちはね『予言』）

〈白鳥の首のカーヴのあの感じ、細い手すりに手を添えている〉（鈴木加成太『うすがみの銀河』）

〈やわらかな曲線である　新入学児なみなみ載せたプラットホーム〉（安藤美保『水の粒子』）

〈なだらかな曲線描く眼鏡入れ書架の片隅に置かれてゐたり〉（山田航『さよならバグ・チルドレン』）

〈湾というやさしい楕円朝あさにその長径をゆく小舟あり〉（松村由利子『耳ふたひら』）

〈わが裡に常描きゐる線ありてあるところよりゆるくカーブす〉（三宅霧子『霧子』）

〈会うためにあるいはもう会わないために橋は静かにカーブしている〉（鈴木晴香『心がめあて』）

〈夜の空にオリオン輝く星と星結び直線引きし人ありて〉（香川ヒサ『ヤマト・アライバル』）

〈春眠より覚めるわたしはチョコレートのカシュウナッツのように曲がって〉（杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』）

〈みづのうへＡよりみづのうへＢへ鷺は線状に身をうつしけり〉（吉田隼人『忘却のための試論』）