まっすぐな道を見るとき直線を腸からのどのあたりに感ず
雪舟えま『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』
雪舟えまの第二歌集『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』(2018年)に収められた一首です。
一読、不思議な歌だと思います。
「まっすぐな道を見るとき」とここまではごくありふれた情景でしょう。特に不思議な感じはしません。しかし、その後の「直線を腸からのどのあたりに感ず」が独特の展開を見せてくれています。
「直線」は、「まっすぐな道」から導き出されたイメージですから無理なく想像できますが、その「直線」を「腸からのどのあたりに感ず」というところが、論理的には説明できない部分でしょう。
なぜ「腸」から「のど」なのか、なぜ「直線」を体の中に感じるのか、そもそもここでいう「直線」とは何なのか、考えれば考えるほど謎めいていきます。しかし、理詰めで考えるのではなく、この歌は主体がそのように感じたのであるから、それをそのまま素直に受け取るのが一番いいのでしょう。
もちろん「まっすぐな道」だから「直線」が出てきたことはわかりますが、互いの関連性が詳しく詠われていないので、読み手はとっさに理解できないのだと思います。
「まっすぐな道」のイメージ、そして「直線」、そのまっすぐでやや硬質な一本線を体の中に感じたということで、この歌を読んだ瞬間、読み手の「腸」から「のど」のあたりにも、同じような一本線が体感として生まれてくるように感じます。
このように詠われると、読み手が自身の「腸」と「のど」を意識せずに読むことはほとんど難しいのかもしれません。どうしても自身の体の中に一本線のひっかかりを覚えながら、読んでしまうのではないでしょうか。
そのあたりが、この歌がもつ力であり、頭で納得する歌ではなく、体で納得する歌といった方が当たっているのではないでしょうか。
結句に注目すれば、”感じる”ではなく「感ず」となっており、この収め方もクラシックな表現であり、一首の中では少し違和をもっていますが、それがかえって効果的なのかもしれません。
細かく見ていくと明確に説明できない部分が多い歌ですが、その説明できなさが謎めいた雰囲気を醸し出しており、その謎の雰囲気にとても惹かれる一首です。

