生きる– tag –

〈手をふれてさびしいふたり何にでもなれる万能細胞のやうで〉（魚村晋太郎『バックヤード』）

〈盛り上がり水くづれたり　老いながらまたあたらしく明日へ運ばる〉（横山未来子『水をひらく手』）

〈かみの毛をうかべたような雲がありここからはずっとチャンスなんだ〉（我妻俊樹『カメラは光ることをやめて触った』）

〈あなたより先に死にたしそののちのあなたの死後にふたたびを死ぬ〉（大森静佳『ヘクタール』）

〈レプリカを何体も置きあとずさるさういふことだ生きのびるとは〉（山田富士郎『羚羊譚』）

〈僕らは朝に牛乳を飲む　骨壺に収めるための骨を育てる〉（田村穂隆『湖とファルセット』）

〈幸せは前借りでありその猫を看取ってやっと返済できる〉（仁尾智『仁尾智猫短歌集　いまから猫のはなしをします』）

〈死ぬ気持ち生きる気持ちが混じり合い僕らに雪を見させる長く〉（堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る』）

〈辛い一生と楽しい生活の間には人間関係というものがある〉（生沼義朗『関係について』）

〈生きててもつまらないから生きている　室蘭は焼き鳥の街だし〉（松木秀『5メートルほどの果てしなさ』）

〈伸びしろがある人間になりたいと伸びしろばかり伸ばした日々は〉（堀合昇平『提案前夜』）

〈生活というのはわからないけれどあなたと水を分かち合うこと〉（土岐友浩『Bootleg』）