傘の歌 #8

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傘の短歌

会いたさは会っても消えてゆかなくて傘を差しても少しは濡れる
鈴木晴香『心がめあて』

鈴木晴香の第二歌集心がめあて(2021年)に収められた一首です。

「会いたさ」を感じるのは、相手と会っていないときであり、相手と会っているときはもうすでに会っている状態ですから「会いたさ」という感情そのものを考えることはないと思ってしまいますが、この歌はそうではありません。

「会いたさ」は会っても消えてゆかないというのです。会うことで解消されない「会いたさ」があるのです。

ここでいう「会いたさ」は、単純に会いたいという思いだけではないのでしょう。会うことだけでは消えない会いたさ、それはとても切実で、わかりやすい感情とはいえません。

会えば消える「会いたさ」であれば、どんなに楽でしょうか。どんなに簡単でしょうか。

掲出歌に登場する思いはそんな簡単なものではないのです。どうしても消すことができない「会いたさ」。そこに心を締めつけられるような思いがします。

下句の「傘を差しても少しは濡れる」に、そんなどうしようもない部分が表れています。傘で雨を防ごうにも完璧には防ぎきれないように、消そうとしても消せない思いがあるのです。

傘という具体物が、どうにもできない状況に、そのどうしようもなさに輪郭を与える役割をしていると感じます。

雨のビニール傘
雨のビニール傘

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