アンブレラ– tag –

〈雨の朝どこへも行けるさびしさに傘はちいさく世界を弾く〉（柳澤美晴『一匙の海』）

〈雨傘を泥につきさしながら行く何かを君に誓いたき日は〉（江戸雪『駒鳥』）

〈ジュラ紀にも梅雨があったかもしれないこうもり傘の遠いい記憶〉（杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』）

〈ホームみて車内みまわし傘もっているのが自分だけとわかった〉（吉岡生夫『草食獣 第八篇』）

〈人よりも傘はもろきをきりぎりに気流みだるる空に差し出づ〉（川野芽生『Lilith』）

〈バス停もバスもまぶしい　雨払ふごとく日傘を振つてから乗る〉（石川美南『架空線』）

〈バーバリーもレノマの傘も役立たぬ　私の中に雨が降るとき〉（大田美和『きらい』）

〈徹夜明け傘をさすには微妙なる雨降る中を茫々とゆく〉（松木秀『5メートルほどの果てしなさ』）

〈ひとつぶの雨落つるまへに傘さして去り行くひとのうしろ影あり〉（沢田英史『異客』）

〈傘で電柱を打ちまくっていればそこ一帯はのどかな町です〉（小坂井大輔『平和園に帰ろうよ』）

〈なくしそうな傘と電車に揺られおり正直に謝ればよかった〉（中沢直人『極圏の光』）

〈折れた傘が捨てられているごみ箱に僕も捨てたいな折れた傘を〉（鈴木ちはね『予言』）