人生の歌 #209

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人生の短歌

さういへば二日あなたを忘れてたさう思ふときあなたを想ふ
西田リーバウ望東子『音程 INTERVALLE』

西田リーバウ望東子の第一歌集『音程 INTERVALLE』(2018年)に収められた一首です。

歌集において、この歌が収められた一連には次の歌が見られます。

亡き夫*のLPレコード蚤の市に売られゐしこと一ユーロにて
            *ギュンター・リーバウ、チェリスト
墓地へ行く路面電車はがたんごとんポインセチアの紅もゆれてる

これらの歌を合わせて想像すると、掲出歌の「あなた」は亡き夫を指していると思われます。

夫が亡くなってから、かなりの月日は経っているのだと思います。日々において、一日のなかで亡くなった夫のことを思い出す時間が少なからずある毎日を送っていたのでしょうが、このときは丸「二日」夫のことを思い出すことがなかったのでしょう。「さういへば」が物語っているように、二日間忘れていたことを後で気づいたのだと思います。

そして、忘れていたなと思ったときに、いつにもまして「あなた」を想ったのでしょう。

人の存在を意識するのはどういうことなのか、改めて考えさせられます。夫がもうこの世にいなくても、夫と一緒に過ごした時間や記憶は、主体のなかに残り続けているでしょう。夫を想うとき、それは夫の何を想っているのでしょうか。

「思ふ」と「想ふ」の漢字が丁寧に使い分けられていますが、この歌の場合「思ふ」は単に気づいたという意味合いですが、「想ふ」は夫に対する愛情や敬意のようなものを含んだ、やさしく穏やかでプラスのベクトルをもった「想ふ」を感じます。

二日間忘れていたことが、かえって夫への思慕を強くさせたのでしょうか。肉体というかたちはなくても、視界に夫の姿は映らなくても、夫の存在を想うことはできるのです。

結句の「あなたを想ふ」がストレートですが、その分力強く迫ってきます。ここからは、夫への揺るがない想いが感じられるのではないでしょうか。

これからの日々、時折夫のことを忘れてしまう日があるかもしれません。しかし、そのたびに帰っていく場所はやはり亡き夫の存在なのでしょう。難しい言葉はひとつも使われていませんが、夫に対する主体の心寄せが強く感じられ、印象に残る一首です。

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