人生の歌 #196

当ページのリンクには広告が含まれています。
人生の短歌

陸橋の上に来て伸びをしてみたり 今日の気持ちが羽化をするように
早川志織『種の起源』(セレクション歌人『早川志織集』より)

早川志織の第一歌集『種の起源』(1993年)に収められた一首です。

とても気持ちのいい歌だと感じます。

よく晴れた日でしょうか。陸橋の上にきて、青空に向かって体を伸ばした様子がよく伝わってきます。体全体が伸びていく清々しさが感じられるのではないでしょうか。

陸橋の上という場所も、地面とは異なり、その場所にいるというだけで、雰囲気があるでしょう。

さて、この歌が心地よく感じるのは、やはり下句によるところが大きいと思います。「今日の気持ちが羽化をするように」という表現が、詩的でありながら、無理のない素直な表現であり、ダイレクトに読み手の心に伝わってくるのではないでしょうか。

まだ縮こまったままだった気持ちが膨らんでいく姿は、屈んでいた体が伸びをすることで広がっていく様に呼応していますし、何より「羽化」がもたらすイメージにより、成虫へステップアップするように「今日の気持ち」を一段階上げてくれると感じられます。ただゆるやかに気持ちが改善するという以上に、次のステップに移る、そんなイメージをもって「今日の気持ち」が上がっていくのではないでしょうか。

音数に注目してみると、五・八・五・七・八となり、二句と結句がともに八音で字余りとなっています。二句は「上」を「え」と読ませれば、七音に収まりますが、ルビがないので「うえ」と読むのでしょう。ですから、七音にしようと思えばできなくもなかったと思いますが、無理に七音にはしなかったのでしょう。

また結句は、助詞「を」を省くと七音になりますが、あえて「羽化をするように」の「を」を入れて詠われています。「を」を入れず「羽化するように」としてもそれほど意味は変わりませんが、八音にしてまでも「を」を残したところに、体が伸びていく姿、そして気持ちが膨らんで気分が上がっていく様子を表したかったのではないでしょうか。

気持ちの変化を「羽化」に喩えて表現したところ、そして二句と結句の一音字余りによってもたらされる、歌全体のふくらみのようなものが魅力的に感じられる一首です。

¥1,430 (2026/10/14 07:58時点 | Yahooショッピング調べ)

♪ みなさまの応援が励みになります ♪


俳句・短歌ランキング

ブログランキング・にほんブログ村へ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次