人生の歌 #194

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人生の短歌

反りあはぬひとのくれたる鯛焼きと反りのあひたる仕事始めは
日置俊次『ノートル・ダムの椅子』

日置俊次の第一歌集『ノートル・ダムの椅子』(2005年)に収められた一首です。

職場にいれば、相性の合って意気投合して仲良くなる人がいる一方で、できればあまり関わりたくないと思う人もいるでしょう。

あまり関わりたくない人が違う部署でほとんど接点がないのであればいいのですが、同じ部署や頻繁にやりとりする必要がある関係にあると、職場での日々は結構つらいものになるのではないでしょうか。

さて、掲出歌も「反りあはぬひと」がいることが提示されますが、その人が「鯛焼き」をくれたというのです。なぜくれたのでしょうか。鯛焼きなので、おみやげではなく、やはり近所で買ってきたものではないでしょうか。

反りが合わない人が鯛焼きをくれるという状況が何ともおかしく不思議な気がしますが、反りが合わないと感じているのは主体の側だけなのかもしれません。相手の側は、主体のことをそれほど避けていないのかもしれません。本当に嫌いな人であれば、何かをあげることはしないと思うので、鯛焼きをあげるくらいは相手の側は何とも感じていないのではないでしょうか。

下句に移れば、上句と対をなすようなかたちで「反りのあひたる仕事始めは」と詠われています。反りが合う合わないの対照構造によって詠われることで、歌が引き締まって感じられます。

一般的に仕事始めは休み明けのため、エンジンがかかるまで時間がかかりそうなものですが、主体にとって、仕事始めは相性がよく、仕事も順調に進んだのではないでしょうか。

ここで「反りのあひたる」は普通に読めば、「仕事始め」にかかると思いますが、読み方によっては「鯛焼き」に関連づいている可能性があることも見ておきたいと思います。四句で「あひたる」の連体形の句切れと見れば、「反りのあひたる」は「鯛焼き」との相性がよいことを示すでしょう。その場合、反りの合わない人がくれた鯛焼きだけど、その鯛焼きとは非常に相性がよいという、少しアイロニーを含んだような印象になるでしょうか。

このような読み方がないわけではないのですが、反りが合う合わないというのは食べ物に対して使うケースはあまりなく、人や物事に対して合う合わないになると思うので、先に示したように上句と下句との対比で読む方が自然かもしれません。

「鯛焼き」という具体物の登場と、「仕事始め」という年に一度の特殊な状況による現場の立体感が際立った歌であり、対句的に詠われたところに魅力を感じる一首です。

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