白粥の口灼くぬかるみすすりつつ身の幸不幸にれかみゐたる
島田修三『蓬歳断想録』
島田修三の第六歌集『蓬歳断想録』(2011年)に収められた一首です。
白粥を啜っているので、風邪でも引いて体調があまり思わしくないときの歌でしょうか。
熱々の白粥を「口灼く」と表現しているところ、そして白粥のどろどろとした状態を「ぬかるみ」と表現しているところに特徴が出ているのではないでしょうか。過剰な表現といえばそれまでですが、「口灼くぬかるみ」とまでいい切った点が、この歌の清々しい雰囲気をつくりあげていると感じます。
さて、そんな白粥を啜りながら、「身の幸不幸」について思いを巡らしているのでしょう。
「にれかみ」とありますが、「にれかむ」とは元々牛や羊などの草食動物が、一度胃に納めた食べ物を再び口の中に戻してかみ直すことを意味する言葉で、ここでは反芻するという意味合いで使われているでしょう。
主体は、これまで生きてきてさまざまな幸不幸を味わってきたのでしょうが、それを再び思い返しているのです。白粥を啜るような、気力体力ともに落ち込んでいる状態であるからこそ、改めて自分の来し方を見つめ直すのかもしれません。
これが元気いっぱい、何をやっても順調すぎるような現在であれば、身の幸不幸を振り返ったりはしないでしょう。振り返るよりも、今現在をもっと集中して生きているはずです。
白粥という具体物、そして「口灼くぬかるみ」や「にれかみゐたる」といった表現が、ひとりの人間のさみしくも存在感のある姿を映し出しているようで、味わいのある一首だと感じます。

