りんかくを日のある雨にかがやかせだれの孤独も華やぎはじむ
三井ゆき『空に水音』
三井ゆきの歌集『空に水音』(1981年)に収められた一首です。
「日のある雨」とあるので、日照雨を想像しました。暗くじめじめした雨や大雨であれば、雨のなか輝くことはないでしょうが、日照雨であれば、雨が降っているなかでも「りんかく」が輝いて見えるのでしょう。
「りんかく」は特定の誰かというよりは、不特定の誰も彼もの輪郭なのだと思います。人が輝いているという表現ではなく、「りんかく」が輝いているという表現が魅力的に感じます。これによって、輝いている状態がより鮮明になり、人の輪郭が際立って感じられるのではないでしょうか。
さて、下句にいけば「だれの孤独も華やぎはじむ」と詠われています。孤独が華やぐという取り合わせに一瞬戸惑いますが、読めば読むほど、孤独が華やぐことはあると思えてきますし、それどころか孤独とは本来さみしいものではなく、むしろ華やぐ状態がふさわしいものなのではないかと感じられてきます。
孤立と孤独は違い、孤立すると人は生きていくのが難しくなりますが、孤独は人が生きていくうえで必要なものだと思います。孤独は自分自身と向き合う状態でしょう。自分自身と向き合う状態を常にもっているからこそ、自分を生かしていけるのだと思います。
生きている人たちはそれぞれ生き方も違えば、考え方も違います。まったく同じ人間はいません。その意味では、多かれ少なかれ、人は皆孤独を抱えているといえるかもしれません。
雨に輝く輪郭をもった人たちの姿はとても美しく感じられたのではないでしょうか。その美しさに、孤独の華やぎを感じたのでしょう。
この歌は、孤独はさみしいものという先入観を覆してくれるのではないでしょうか。孤独が華やぐとは、何と楽しく愉快なことでしょう。それは自分ひとりの孤独だけではありません。「だれの孤独」も華やいでいいのです。
この歌に触れたとき、街ゆく人を見つめる目がほんの少しやさしくなるような、そんなやわらかさを抱えた一首だと感じます。

