鑑賞– appreciation –

〈質問に過ぎない生を生きながら捨ててしまった片方の生〉（山崎聡子『青い舌』）

〈生きることすべてが予感じみている栞ははじめから挟まれて〉（鈴木晴香『心がめあて』）

〈問題に取り組むよりも問題を忘れることで生きのびてきた〉（工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』）

〈「人生は苦しい」（たけし）「人生はなんと美しい」（故モーツァルト）〉（永井祐『日本の中でたのしく暮らす』）

〈人生が何度あっても間違えてあなたに出会う土手や港で〉（千種創一『千夜曳獏』）

〈人はみな馴れぬ齢を生きているユリカモメ飛ぶまるき曇天〉（永田紅『日輪』）

〈GABAチョコは部下の前では食べにくい出してやっぱり鞄にしまう〉（奥村知世『工場』）

〈悪くない　置き忘れたらそれきりのビニール傘とぼくの関係〉（松村正直『駅へ』）

〈なんらかのテストのようでまた傘の角度を前に左に変える〉（虫武一俊『羽虫群』）

〈灯りたるジュースの自動販売機コイン入れれば枯れ野広がる〉（岡部桂一郎『一点鐘』）

〈私だけ部下を持たない組織図は北極のような空白がある〉（奥村知世『工場』）

〈白パンにバターとジャムを塗ることが幸せである行為　はつなつ〉（小島なお『乱反射』）