ラーメンの歌 #15

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ラーメンの短歌

公平さの象徴として拉麵屋にならぶ列あり紺のゆふぐれ
魚村晋太郎『バックヤード』

魚村晋太郎の第三歌集バックヤード(2021年)に収められた一首です。

昔に比べるとラーメン屋が増えたという印象がありますが、人気のラーメン屋は開店前から行列ができるところもあるくらいです。いや、行列ができるから人気店なのでしょうか。

掲出歌は、そんなラーメン屋で順番待ちをする客の列について触れた歌です。それだけであれば、よくある光景ですが、この歌のポイントは初句二句の「公平さの象徴として」という部分でしょう。

何をもって「公平」とするか、これはなかなか難しい問題ではないでしょうか。「公平さ」に対する考え方や感じ方は、大枠の方向では同じであっても、細かい部分でいえば人によって微妙に異なると思います。

「拉麵屋にならぶ列」を「公平さの象徴」として詠っているのですが、確かにラーメン屋の前では客は律儀に順番を守っています。また前後の客と特に話をするわけでもなく、干渉するわけでもなく、かといって苛立つわけでもなく、単にラーメンを食べるために待っているという印象があります。

この列に並ぶ人は皆、おいしいラーメンを食べたいがために並んでいるのであって、そういう意味では、順番を待つということに対してかなり従順というか素直なのだと思います。待っていればいつかはラーメンが食べられるわけです。

もちろんラーメン屋に限らず、カフェや甘味処などでも行列はあるわけですが、行列をよく見かけるのがラーメン屋に多いこと、一杯のラーメンを食べるために黙々と待っている印象が強いことなどから、行列の純粋さという意味ではラーメン屋が最も似合っているように感じます。

日本ではあまり見かけませんが、海外では順番待ちの概念が薄いのか、店の中で平気で順番を抜かそうとする人もいることは確かです。順番待ちを乱す行為は、この歌でいう「公平さの象徴」には当たらないのでしょう。

場面は「紺のゆふぐれ」であり、夕方開店する店なのでしょうか。暮れていく景色の中に行列が溶けていくような感じがし、それは「公平さ」が「ゆふぐれ」に浸透していくような印象を感じさせます。

ラーメンそのものを詠った歌ではありませんが、ラーメン屋に並ぶ列に注目した歌で、印象深い一首だと思います。

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