パンの歌 #6

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パンの短歌

フジパン本社だが春昼にパンを焼く匂ひでここは有名になる
荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』

荻原裕幸の第六歌集リリカル・アンドロイド(2020年)に収められた一首です。

フジパングループ本社株式会社は、愛知県名古屋市瑞穂区に本社を置いています。初句の「フジパン本社」とはこの会社の本社を指しているのだと思います。

そして、本社の置かれている場所が「パンを焼く匂ひ」で有名になっていると詠われています。

二句の「だが」に注目しました。通常パンは工場でつくられるわけで、工場でパンを焼く匂いがするのはわかります。しかしこの歌では、工場ではない本社でパンを焼く匂いがするので、「本社だが」という言い回しになっているのでしょう。

あるべきところにあるべきものがあれば「当たり前」となりますが、あるべきところにあるべきものがない、あるいはあるべきではないところに何かがあるということになれば「有名」になるきっかけになるのかもしれません。

春昼しゅんちゅう」という言葉ものどかな感じを与えてくれて、パンを焼くイメージととてもよく合っていると思います。フジパンではありませんが、山崎製パン株式会社の「春のパンまつり」のあたたかな雰囲気も思い出されました。

パンを焼く匂いを嫌う人もいるとは思いますが、のどかな春の昼間にパンを焼く匂いが流れてきたら幸せな気持ちになる人も多いのではないでしょうか。

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