人生の歌 #187

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人生の短歌

信号の点滅さっきより速いアキラメマスカナキヤミマスカ
やすたけまり『ミドリツキノワ』

やすたけまりの第一歌集『ミドリツキノワ』(2012年)に収められた一首です。

歩行者用信号でしょうか。青信号から赤信号に変わるとき、歩行者用信号の青が点滅している場面を想像しました。

「信号の点滅さっきより速い」と詠われているので、点滅を意識して見ているのは今この一回だけではないようです。先ほどの点滅と今見ている点滅とを比べて、今の点滅の方が速いと感じているのです。

信号の点滅は機械的に処理されていますので、速さが変わることはないでしょう。ですから、この「さっきより速い」は主体の実感として、速く感じられたというです。

点滅が速いと、急かされているように感じるのではないでしょうか。速い点滅は「アキラメマスカナキヤミマスカ」と突きつけてきたのです。

決断を今すぐしてくださいといわんばかりの速い点滅に思われたのではないでしょうか。このときの主体には、悩みごとやつらく感じることがあったのかもしれません。実際泣いていたのかもしれません。その悩みやつらさに対する選択を迫るような点滅。あきらめるのか、泣き止むのか。

カタカナで詠われた「アキラメマスカナキヤミマスカ」は無機質感を伴いながら、主体に問いかけてきます。これがひらがなや漢字交じりで表記されていれば、まだやわらかさを感じるのですが、カタカナで表記されることにより、まるでコンピュータに問いかけられているような印象が強く出ているでしょう。また、この二択以外の選択肢がないような感じもして、第三の解決の道が閉ざされているような気もします。

主体は、ここでどちらかを選ばないといけないのでしょうか。この歌の雰囲気から感じることは、今すぐにはどちらも選べないような感じを受けてしまいます。もう何度も信号の点滅を見てきたのではないでしょうか。その度に突きつけられる問いかけに何度も答えを出そうとしている姿が浮かびますし、同時に最終的な答えを出せないままの姿も浮かんできます。

信号の点滅の速さが物語る心の内と、下句の「アキラメマスカナキヤミマスカ」の表記も含めた問いかけが印象に残る一首です。

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