今決めた
あたしは今日は世界一強く優しく楽しく自由
加藤千恵『たぶん絶対』
加藤千恵の第二歌集『たぶん絶対』(2002年)に収められた一首です。
日々生活していると、どうもうまくいかないなと感じることや、どうして自分だけこんな目に遭わないといけないのかと恨みたくなるようなこともあると思います。
それは、自分の判断の結果、思うようにいかないこともあるでしょうが、自分では精いっぱいやっているのに、自分ではどうすることもできない範囲の影響によって、うまくいかないこともあるでしょう。
そのようなときに、イライラしたり、叫びたくなったり、八つ当たりしたくなることもあるでしょう。しかし、怒ったり嘆いたりしていても、事態が改善することは少ないと思います。
では、そのようなときに何ができるのでしょうか。この歌は、まさに今自分ができることは何なのか、そしてどうすれば今の自分を最も心地いい気分にさせてくれるのかを教えてくれるのです。
「あたしは今日は世界一強く優しく楽しく自由」は何とも素敵な自己肯定ではないでしょうか。事態はすぐに好転しないとしても、今日この一日をどういう一日にしたいかは自分で決めることはできるのです。「今決めた」は、世界や事態に対して、今の自分ができる範囲の行動のうち、決断して宣言することができる強さを表しているでしょう。
「世界一」ということも「強く」「優しく」「楽しく」「自由」であることも、今日そのように過ごすことも全部自分で決断可能なのです。
周囲の状況のよしあしや、今後の展開がどうなるかは、今の自分が制御できる範囲を超えているでしょう。しかし、今日気分よく最高の自由を味わう一日にすると決めることは、自分で制御できる範囲なのです。そうであれば、自分ができる範囲で、今日最もすばらしい一日を過ごすために、最高の自分でいる決断をすればいいのではないでしょうか。
この歌を読むと、今日の自分をどうするかは自分が決めていいんだという勇気をもらえる気がします。二行書きも効果的で、決断の一行目と、どういう自分であるかの二行目が立ち上がる構成になっていると感じます。
「今決めた」はどの瞬間からでも可能でしょう。遅すぎることはありません。「今決めた」の力強さがひしひしと伝わってくると同時に、本当に心の底から「強く優しく楽しく自由」である自分でいることを認める主体の姿が清々しく、開放的な心のありようが前面に表れていると感じられ、とても印象深い一首です。

