ラーメンの歌 #10

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ラーメンの短歌

ラーメンのうつわ大きく湯気たちて器の中に顔入れて食う
岡部桂一郎『一点鐘』

岡部桂一郎の第四歌集『一点鐘』(2002年)に収められた一首です。

ラーメンを啜るとき、それは決してお上品な食べ方である必要はありません。むしろ豪快に食べるくらいのほうが、ラーメンを提供した側も、あるいは隣で見ている人も気持ちいいものでしょう。

掲出歌は、まさにラーメンを食べる瞬間を切り取った歌ですが、その捉え方が面白いのです。「器の中に顔入れて食う」はいわれてみると確かにそんな感じがしますが、いわれるまで「器の中に顔」を入れるという把握の仕方になかなか思い至らないのではないでしょうか。

まるで洗面器に顔を沈めて、何秒息を止められるかといった練習をしているような場面が重なるくらい、ラーメン鉢に顔が入っている様子を思い浮かべてしまいます。

ただラーメンを食べるという場面でさえも、物事の把握の仕方次第で、新たな視点が与えられる一首が生まれるのです。このラーメンはきっと「うまい」ラーメンだったと思います。

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