その内に海を満たして水筒はまだあるだろうその海底に
掲出歌は、千種創一の第一歌集『砂丘律』の連作「ザ・ナイト・ビフォア」に収められた一首です。
水筒を使う場面は、日常の外出における場合がほとんどではないでしょうか。であるならば、水筒が海底にあるという状況はとても特殊な状況です。
海底に沈んだ水筒の内部には海水が満ちています。蓋が開いたまま沈んだ水筒でしょうか。正確には「海水」が満ちているのではなく「海」が満ちているのです。この差は大きいでしょう。内側に海水が満ちている状況は現実的な場面として捉えることができますが、海を満たしているといわれると詩的な雰囲気が醸し出されます。
この水筒は永遠に海底に在り続けるのかもしれません。水筒の背景には、海のように壮大な物語が広がっているような、そんな感じを与えてくれる一首です。
ポチップ
