短歌クイズ Q.285

引き出しをひっくり返す音に似た雷、あれは神の断捨離

掲出歌は、笹川諒の第一歌集『水の聖歌隊』の連作「ビードロ」に収められた一首です。

「断捨離」という言葉が広く使われ出したのはいつごろでしょうか。元々はヨガの思想から生まれた言葉ですが、現在では少し意味が変化して、部屋の片付けや物を捨てる意味合いとして使われています。

断捨離をするのは人間だけかと思っていたら、どうもそうではなかったようです。この歌では「神」が断捨離をしているところが捉えられています。

雷、しかも引き出しをひっくり返す音に似た雷に、神の断捨離を見出しています。雷の音から、神の断捨離を想像する発想力に驚かされます。

雷の音として、神の断捨離は目に見えるものではなく、聞こえるものとして把握されているのです。雷の音は目に見えないからこそ、普段目にすることのない「神」の存在が登場しているといってもいいでしょう。

しかし、神の断捨離とは一体何を捨てているのでしょうか。

神の力をもってすれば、あらゆるものを整理することが可能でしょう。神が整理しているものが、単にものではなく、生きとし生けるものだったと想像すれば、少し怖ろしさを帯びてくるかもしれません。

片付いてよかったねでは済まされない一面も想像できる一首ではないでしょうか。