手品の歌 #11

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手品の短歌

泣いていたあなたが僕の下手くそな手品で笑う 手品みたいだ
木下侑介『君が走っていったんだろう』

木下侑介の第一歌集君が走っていったんだろう(2021年)に収められた一首です。

自分にとって親しい「あなた」が泣いているのは、悲しいことかもしれません。

そんな「あなた」に笑ってもらいたくて、見せる手品。それは決して上手な手品ではありませんでした。むしろ「下手くそな手品」であったのですが、そんな下手な手品でも「あなた」は笑ってくれたのです。

下手くそだから笑ってくれたのでしょうか。そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。でもそんなことはどうでもいいことのように思います。

「あなた」が笑ってくれたこと、それが一番だからです。こんな下手くそな手品で「あなた」の笑顔が見られるなんて、本当「手品みたい」です。

難しいことは何もいっていませんし、技巧を凝らした歌でもないでしょう。でも読み手の心にストレートに伝わってくる歌であり、読み終えると心が温まる一首です。

「あなた」の笑顔が本当に輝いていて、いつまでも印象に残り続けます。

ふたり
ふたり

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