鑑賞– appreciation –

〈ノー・ウンチ、ノー・ライフ、ああ、この先の百年をウンチせよかし、おまへ〉（大松達知『ゆりかごのうた』）

〈死ぬまでにせぬこと出来ぬままのこと考へてゐる箸洗ひつつ〉（近藤かすみ『雲ケ畑まで』）

〈棒切れかなにかのごとき一生も棒切れに長さありてわれ泣く〉（渡辺松男『歩く仏像』）

〈（はじめから間違いだとしてひきつづき間違うとしても）生きなければね〉（野樹かずみ『路程記』）

〈今日もまた前回までのあらすじを生きてるみたい　雨が止まない〉（『風のアンダースタディ』）

〈自販機に〈なまぬるい〉のボタン見つけたらわたしはきっと次の段階〉（鈴木美紀子『風のアンダースタディ』）

〈カップ麵にお湯注ぐとき思うんだこうやってお湯降ってくるでしょ〉（大前粟生『柴犬二匹でサイクロン』）

〈いまはただ春の麒麟にあいたくて卵サンドをつくっています〉（岸原さや『声、あるいは音のような』）

〈美しい日没があすもあるのかと問う声にえぐられている日あり〉（百々登美子『盲目木馬』）

〈負ケ犬ニナルナとばかり教えられ負ける強さを知らずに育ち〉（大井学『サンクチュアリ』）

〈なにかに負けてゐるかのやうになにかを嘲笑つてゐるかのやうに夏を過ごした〉（染野太朗『初恋』）

〈眠りたくなつて眠つて目が覚めて食べる排泄する歩き出す〉（石川美南『架空線』）