コーヒーの歌 #11

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コーヒーの短歌

ターキッシュ・コーヒーにあるトルコみは分からないけど乗り継ぎに飲む
榊原紘『悪友』

榊原紘の第一歌集悪友(2020年)に収められた一首です。

飛行機の乗り継ぎにおいて、次の飛行機が出発するまでの間、空港で時間を過ごしている場面です。

「ターキッシュ・コーヒー」とはトルココーヒーのことですが、トルココーヒーといわず「ターキッシュ・コーヒー」といったところに、語感のおしゃれさと実際に現地にいる現場感が一層増して感じられるのではないでしょうか。

調べてみると「ターキッシュ・コーヒー」といういい方は英語のようです。綴りはTurkish coffee。まさにトルコのコーヒーということですね。トルコ語ではテュルク・カフヴェスィというようです。

トルココーヒーは、コーヒーの銘柄ではなく、コーヒーの淹れ方を指す用語です。フィルターで濾さず、コーヒーを粉ごとカップに注ぎ、粉が沈殿した上澄みを飲む濃厚な味わいが特徴のコーヒーのようです。

もし、このような情報を知らなくても、トルココーヒーを飲んだことがなくても、初句の「ターキッシュ・コーヒー」という言葉が一気に歌の世界へ連れていってくれるのではないでしょうか。それほど「ターキッシュ・コーヒー」から詠い始められたこの歌は、魅力的に感じます。

三句の「トルコみ」という表現も面白いです。ターキッシュ・コーヒーだから、それは普通のコーヒーと違うわけで、ターキッシュ・コーヒーと名乗るだけの差異や特徴があるはずですが、主体はその特徴をよくつかめていません。ターキッシュ・コーヒーの特徴はよくつかめていないけど、ターキッシュ・コーヒーを飲んでいるのです。差異や特徴を「トルコみ」というやわらかな言葉で表現したことで、読み手にとってもターキッシュ・コーヒーに対する距離がぐっと縮まるように感じます。

この歌では、ターキッシュ・コーヒーの味の善し悪しを語ろうというわけではなく、空港においてターキッシュ・コーヒーを飲んだという出来事そのものの大切さが詠われているのでしょう。

乗り継ぎでターキッシュ・コーヒーを飲むというのは、いうなれば非日常の出来事であって、その滅多にない出来事を見つめて味わう視線をこの歌から感じるのです。それは今という時間を直視して生きていることにもつながっていくと思います。

派手な歌ではなく、意識しないと見逃してしまいそうなひとときを詠った歌ですが、まさに味わい深い一首ではないでしょうか。

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