傘の歌 #26

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傘の短歌

花柄の傘を開けば色彩に包まれている いつかやむ雨
川本千栄『樹雨降る』

川本千栄の第三歌集樹雨降る(2015年)に収められた一首です。

「やまない雨はない」とはよく耳にする言葉ですが、雨は「いつかやむ」ものなのでしょう。ずっと降りつづける雨というのは存在しないのではないでしょうか。

そんな「いつかやむ雨」なのですが、そのような雨に対して「花柄の傘」を開いている場面が詠われています。傘に包まれるのでもなく、花に包まれるのでもなく、「色彩に包まれている」という表現がとても魅力的に感じます。包まれているのは、おそらく主体自身のことを指しているのだと思います。

「色彩に包まれている」時間は、主体にとって貴重な時間なのかもしれません。そして、主体をより主体らしく輝かせてくれるものなのではないでしょうか。

「花柄の傘」がもたらす「色彩」は、まさに色鮮やかに主体を包み込んでいるのです。どんな花かは読み手の想像に委ねられます。一種類の花かもしれませんし、複数種類の花かもしれません。色合いはどうでしょう。赤やピンクのイメージでしょうか。黄色のイメージでしょうか。それとも白色でしょうか。色合いもさまざまに想像できますが、包まれている主体は、鮮やかな色彩のように明るく色とりどりに存在感を示しているように感じます。

しかし、その輝かしい時間は、「花柄の傘」を開いている時間に限られているとも想像できるでしょう。時間的限定があるからこそ、その時間がより一層輝く時間となるのではないでしょうか。

ですから、結句の「いつかやむ雨」という部分には、ほんのわずかにさみしさのようなものが含まれているように感じてしまうのです。早くやんでほしいというよりは、色彩にもう少しの時間包まれていたいから、雨よ、しばらくやまないでほしいといった気持ちの方が強いのではないでしょうか。

けれども、やまない雨はなく、雨はいつかやむでしょう。雨がやむまでは色彩に包まれていることができますが、逆に見れば、雨がやんだ後はその色彩を解かれてしまうということを意味します。

「いつかやむ雨」という終わり方に、客観的というか、ドライというか、とにかく冷静な目を感じずにはいられません。

どれだけ「色彩」に包まれていて輝かしい瞬間を味わっていようと、主体は雨がやむことを知っているのです。やむことを知っているからこそ、「色彩に包まれている」瞬間を心の底から存分に味わっているのかもしれません。

この歌は、さみしくもあるし、色彩に包まれている時間の貴重さがひしひしと伝わってくる部分もあり、複雑な心境が織り込まれた一首なのだと感じます。

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