〈ラーメン〉と赤地に白く染められた決定的な幟はためく
工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』
工藤吉生の第一歌集『世界で一番すばらしい俺』(2020年)に収められた一首です。
ラーメンの幟は、なぜあんなにも目立つのでしょうか。
大抵は、赤地に白文字か、白地に赤文字のものをよく見かけます。また赤、白、黒の組み合わせの幟も多いように思います。赤色は暖色で食欲推進の色ですし、白色は清潔感を想起でき、赤色も白色も食品によく使われる色です。
特に建物の陰に隠れたラーメン屋の場合、道路脇などの目立つところに幟が立ってないと、気づいてすらもらえないでしょう。幟の役割は結構重要です。
さて、掲出歌は、誰もが見たことのあるラーメン屋の幟を「決定的」と表現したところに面白さを感じます。
確かに、弱い色の組み合わせで遠慮がちに「ラーメン」と書かれているのと、赤と白のコントラストではっきりと目立つように書かれているのとでは全然違います。
幟の目的は、目立つことです。多くの人々に気づいてもらうことです。目立たない幟、誰にも気づかれない幟であれば、厳しいいい方になりますが、そこに立っていないも同然です。目立ってこそ、気づいてもらってこそ、幟がそこに存在する意味があるといっていいでしょう。
ですから、幟は目立つ必要があるのです。赤と白で書かれているのもそのためです。
道路沿いなどで赤字の幟が立っていると、意識しなくても目に入ってくることがあります。ここにラーメンがあるぞ、と強い意思でアピールしてくる、そんな力強さを感じます。
ラーメンを食べたいなと考えているときに、偶々ラーメン屋の幟を見つけたとしましょう。もう、そのラーメン屋が気になって仕方がないのではないでしょうか。美味しいかどうかはわからないけれど、とりあえず店の前までいってみようかなという気になるのではないでしょうか。食べるかどうかは、メニューを見てから、そして流行っているかどうかを見てからでもいいでしょう。まずは、どんな店なのか見てみないことにはわからないから、一旦店の前までいってみよう。こんな感じになるのではないでしょうか。
幟には、それほどの力があるのです。遠くからでも、客を引き寄せる力があるのです。
まさに「決定的な幟」なのです。
ラーメン屋の味の評価はともかくとして、赤地に白文字の「ラーメン」を見るとラーメン屋に引き込まれてしまう力が幟にはあるのだと改めて気づかせてくれる一首です。


