問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】となりて待つにあらねど冬を越す手袋に淡きみどりを選ぶ〉 (雨宮雅子)
A. 木
B. 絵
C. 火
D. 手
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解答 – Answer
A. 木
解説
木となりて待つにあらねど冬を越す手袋に淡きみどりを選ぶ
掲出歌は、雨宮雅子の第八歌集『昼顔の譜』の一連「八重葎」に収められた一首です。
新たに購入したのか、あるいは抽斗の奥に眠っていた手袋を取り出したのか、どちらも考えられますが、いくつかある手袋の中から、「みどり」色の手袋を選んだ場面でしょう。
この「冬」は「みどり」色の手袋を身につけていこうということかと思います。なぜ「みどり」色の手袋を選んだのかということの理由が、わずかに示されているところに、この歌のポイントがあるのではないでしょうか。
「木となりて待つにあらねど」が、「みどり」色を選んだことと関係しますが、主体は手袋を選ぶときに、「木」のイメージが浮かんだのだと思います。人体の末端である手に「みどり」色の手袋をはめることと、木の枝先に緑色の葉が生い茂る様子が、重ね合わさったのでしょう。
けれども、その重なりのイメージは強いものではなく、かすかにそのように感じた程度で、決して木のイメージと「みどり」色の手袋のイメージを積極的に重ね合わせたいわけではないと思います。それが「あらねど」に表れているのではないでしょうか。
ただ「あらねど」と打ち消されることで、逆に読み手にとっては、木と手袋のイメージがより強く結びついてしまうことも確かでしょう。
上句があることで、「みどり」色の手袋を選んだことに何かしらの意味が生まれる、そのように感じる一首です。
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