補色の歌 #11

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補色の短歌

台風はテレビの中で進みゆく赤いきつねと緑のたぬき
花山周子『屋上の人屋上の鳥』

花山周子の第一歌集屋上の人屋上の鳥(2007年)に収められた一首です。

「赤いきつね」と「緑のたぬき」は、東洋水産株式会社がマルちゃんブランドで販売しているカップ麺で、「赤いきつね」がうどん、「緑のたぬき」がそばです。

場面はいくつか考えられるかと思います。

ひとつは家の中で台風のニュースを見ている場面です。時間帯は昼どきかもしれません。カップ麺をテーブルに置いて食べようとしているのでしょうか。これから食べるというのであれば、カップ麺がひとつではないところから、家族と一緒かもしれませんし、誰か親しい人と一緒かもしれないとわかります。

同じ家の中でも、戸棚にしまわれた備蓄品としてのカップ麺を確認している場面かもしれません。この場合は主体ひとりで見ているとも考えられます。

ほかには、外でテレビを見た場面とも捉えることが可能でしょう。大型テレビジョンや、買い物の途中でテレビを見たところ、あるいは「赤いきつね」と「緑のたぬき」を買って帰った帰りの車の中でテレビを見た場面というのも充分考えられるでしょう。

いずれにしても「赤いきつね」と「緑のたぬき」の補色の強さが、台風が強くなって移動していく様子との対比でより活きているように感じます。

「赤いきつね」と「緑のたぬき」は二つセットで並べられるところに効果があります。江崎グリコ株式会社のポッキーシリーズでも赤と緑が並べられて売られていたことがありましたが、これも同様で片方がもう片方を鮮やかにする効果によって二つセットで販売されています。仮にどちらか片方しかその場に置かれていない状況を想像してみると、赤と緑の補色関係の二色が並べられていることの鮮やかさがよりはっきりするのではないでしょうか。

掲出歌では台風の進行を背景として、「赤いきつね」と「緑のたぬき」の鮮やかさがくっきりと浮かんでくる一首になっています。

カップうどん
カップうどん

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