チョコレートの歌 #12

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チョコレートの短歌

チョコレート菓子から先に秋となりその色合いに木々が従う
木下龍也『オールアラウンドユー』

木下龍也の第三歌集オールアラウンドユー(2022年)に収められた一首です。

チョコレート菓子の販売ですが、季節を若干先取りして店頭に並ぶことが多いでしょう。秋であれば、マロン味、お芋の味、モンブラン、またハロウィンの衣装や小物などとも通じ、どちらかといえば暖色系、橙色や茶色などの色合いのお菓子が多数目に入ってくるようになります。

掲出歌は、お菓子と秋の移り変わりを非常に巧みに詠んだ歌だと思います。

夏の青いイメージとは違い、秋は紅葉の赤や黄色いイメージへと変わっていきますが、その色合いの移り変わりを「チョコレート菓子から先に秋となり」と詠んだところに、著者の目のつけどころがいかに鋭いかがわかると思います。

この上句では、秋になって紅葉してから秋仕様のチョコレート菓子が売られるのではなく、先に秋仕様のチョコレート菓子が販売されて、それから秋の紅葉が始まるという順番を示しています。そして下句で「その色合いに木々が従う」とまとめた点に納得感を覚えます。

お菓子市場と秋の紅葉、この二つの季節の移り変わりの微妙なずれが三十一音の中に過不足なく、わかりやすく収められています。社会における秋と自然の秋との、ある種逆転現象のような状況が表現されていて、わずかな違和感を感じさせるところも見逃せないポイントだと思います。

いわれてみると確かに毎年当たり前の出来事なのかもしれませんが、誰もがいわれれば気づくのだけれど、いわれる前は気づかずに何となくはっきりしないという場面や状況を捉え、巧みに提示している一首ではないでしょうか。

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