ラーメンの歌 #7

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ラーメンの短歌

向かい合い各々啜るラーメンの麺にはつかに絡む重力
鯨井可菜子『アップライト』

鯨井可菜子の第二歌集アップライト(2022年)に収められた一首です。

いわれてみれば当たり前のことかもしれませんが、ラーメンというのはひとりで食べる食べ物なのだと改めて感じました。

もちろん家族や友人と一緒にラーメン屋にいって、カウンター席やテーブル席で並んで、あるいは向かい合って食べたとしても、やはりひとり一杯を頼みますし、ひとりひとりが自分の目の前の器に向かって食べる食べ物であり、その意味でひとりで食べる食べ物だと思います。寄せ鍋や大皿料理のように、みんなで分け合ってというものとは大きく違う食べ物でしょう。

さてそんなラーメンですが、掲出歌は相手と向かい合って食べている場面です。向かい合っていても、「各々啜る」にやはりひとりひとりが別々で食べているところが表れているでしょう。

麺に重力が絡むという下句の把握を面白く思います。それもわずかに絡むのです。それは、麺のからまり具合やスープの乗り具合などから重さを感じるということでしょうか。ラーメンに重力をもちだすというのはやや大仰な気もしますが、重力が「絡む」という表現が、ラーメンの麺の状況を的確に捉えているように感じます。

あるいは、重力が絡むのは何も物理的な話だけではなく、向かい合う二人の状況や関係性をも想像させてくれるところがこの歌に濃さを与えているのかもしれません。何も関係性がマイナスだとは限らず、麺に重さを感じる何かが向かい合いラーメンを食べている状況の二人にはあるのかもしれないということです。

この地球上で生きている限り、重力というのは生まれてから死ぬまで自分自身にずっとかかっているものでありますし、ときにはラーメンの麺にその重力を見い出すなどするわけですが、重力というのは決して逃れることのできないものであることを改めて感じさせてくれる一首ではないでしょうか。

ラーメン
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