手品の歌 #20

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手品の短歌

めづらしく遅れずまはる回覧板 秋の祭りの手品師募集
日置俊次『ノートル・ダムの椅子』

日置俊次の第一歌集ノートル・ダムの椅子(2005年)に収められた一首です。

普段も回覧板はまわっているのでしょうが、いつもはまわるのが遅れがちなのでしょう。今回は「めづらしく遅れずまはる」とある通り、スムーズに回覧板がまわってきたことが窺えます。

その回覧板には、「秋の祭りの手品師募集」の案内が挟まれていたのでしょう。回覧板で案内するぐらいですから、町内会や自治会の秋祭りでしょうか。それほど大きな規模の祭りではなさそうです。

もし大規模な祭りのイベントとして、マジックショーがあるのであれば、プロのマジシャンにお願いするでしょう。しかし、ここでは回覧板で募集しているくらいですので、やはり小規模の地域のお祭りが想像できます。

その秋祭りでマジックショーのコーナーを設けたいということだと思います。でも、まだ出演者が決まっていない。だから、回覧板で募集しているのでしょう。いってみれば立候補制で、腕前よりも、秋祭りを盛り上げてやろう、秋祭りで手品をやりたいという意思をもった人が優先されるような感じがします。ですから、腕にあまり自身がなくても、やりたいといえば採用される可能性が高そうな、そんな「手品師募集」なのではないでしょうか。

この歌を読んで、私が小学生の頃、町内会の盆祭りで見た手品を思い出しました。いくつかありましたが、特に印象に残っているのは、ロープマジックです。ロープの結び目をハサミで数か所切断するのですが、マジシャンがおまじないをかけると、ロープは切断されておらず、元通り一本のロープに戻ってしまうという手品でした。今となってはそのタネがわかりますが、子どもの私の目にはとても不思議に映りました。そのときに演じてくれた人も、プロのマジシャンではなく、町内に住む誰かだったのだと思います。ただ、子どもをびっくりさせるくらいの腕はあったのでしょう。

「秋の祭りの手品師募集」を掲載した回覧板が遅れずにまわるということは、急募だったのかもしれません。町内全体で祭りを盛り上げたいという思いが、手品師募集の案内を早く次の人に知らせたいという行動につながったのかもしれません。

ここで募集される「手品師」は決してプロの腕前を必要としないところに、あたたかみを感じます。町内会や自治会だからこそ、回覧板で募集ができるのであり、その募集という行為自体が、町内のつながりを感じさせてくれるように思います。それほど目立った歌ではなく、何気ない歌ですが、味わいがあり印象に残る一首です。

手品師

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