メールの歌 #15

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メールの短歌

文字化けのメール開けば溢れ出る涙の訳を教えてほしい
岡本真帆『水上バス浅草行き』

岡本真帆の第一歌集水上バス浅草行き(2022年)に収められた一首です。

このメールは、パソコンで見ているのでしょうか、それともスマホで見ているのでしょうか。「文字化け」が詠われており、中々珍しいところに着目した歌だと感じます。

「文字化け」とは、文字が正しく表示されず、意味不明な記号や文字として表示される現象です。

「文字化け」が起こる原因としては、送信側と受信側の文字コードが異なっているケースが多いと思います。または、機種依存の文字や絵文字といった特殊な文字が、特定の機種や端末では表示されるのに対して、他の端末ではうまく表示されないといったケースもあると思います。

掲出歌は、「文字化けのメール」を開けた場面を詠っていますが、そのときに主体の目からは何と涙があふれ出たのです。

なぜ、文字化けのメールを開くと涙があふれ出たのでしょうか。

「溢れ出る涙の訳を教えてほしい」とあり、その理由は主体自身にもわかっていないことが窺われます。いや、それとも、理由は何となく思い当たるところがあるけれど、あえて誰かに、あるいは読み手に「教えてほしい」と投げかけているのかもしれません。

単に涙が出たという歌ではなく、涙が出た訳にフォーカスが当たっていること、そしてさらには、その訳を教えてほしいというところに、ひとりよがりの歌ではない、他者とのつながりのようなものが湛えられているように感じられはしないでしょうか。

このメールはどのようなメールだったのか、色々と想像することができるでしょう。

例えば、つい先ほど送られてきたメールではなく、見ていたのは過去のメールであり、現在は機種や端末が変わったことで文字化けしてしまっているものかもしれません。あるいは、文字化けのメールを現実的に捉えるのではなく、主体にとっての想像上のメールというふうにも捉えることができるかもしれません。さらには、メール自体は正常なのだけれど、涙があふれ出たから、メールがまるで文字化けしているように見えたというように、逆の発想で読むことも決して不可能ではないでしょう。

「文字化け」と「涙」の関係性は明確にされていませんが、明確に示されていないがゆえに、読み手にとっては想像の余地があると思います。そして結句「教えてほしい」というところに、外部に開かれているような印象があり、色々と考える楽しさを与えてくれる一首になっているのではないでしょうか。

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