『短歌部、ただいま部員募集中!』小島なお / 千葉聡

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短歌部、ただいま部員募集中!
質問者

短歌って何だろう? 短歌のことを知りたいんだけど、あまり難しいこといわれてもわからないからなあ!? 肩肘はらずに読める短歌の入門書はないかなあ?

短歌が話題になっているこの頃ですが、そもそも短歌って何だろうという人や、短歌をもっと知ってみたいんだけど、どうすればいいかわからないという人も多いのではないでしょうか。

もちろん短歌入門書を読めばそれなりに短歌への理解は深まりますが、どの入門書を読めばいいのかがわからないというケースもあります。また短歌入門書とは名乗っていても、いわゆる教科書的な入門書もありますから、最初からお勉強モードになっても、本来の短歌の魅力に気づけるかという問題も出てきます。

そんなとき、肩肘はらずに読める短歌の入門書のようなものがあると、これから短歌に触れる人にとってはとてもありがたいものです。最初の一冊に何を選ぶによって、その後短歌にのめり込んでいくかどうかが決まるといってもいい場面もあるでしょう。

今回は堅苦しい教科書的な入門書とは一線を画した一冊ということで、小島なお・千葉聡の共著『短歌部、ただいま部員募集中!』を見ていきたいと思います。

これから短歌を始めるという人はぜひ当書に触れて、短歌の魅力を感じてみてはいかがでしょうか。

目次

当書のもくじ

まずは『短歌部、ただいま部員募集中!』のもくじを見てみましょう。

この本の内容

はじめに

1 短歌、はじめの一歩

  • はじまりは「なんかいいな」
  • 授業で習った言葉を入れてみる
  • 活字になる嬉しさ
  • 短歌はときに悲しみの器
  • 短歌があるから

休憩時間 短歌クイズ

 世界は三十一音でできている

  • 学校に行きたくないときは
  • #SNSと私
  • 人間関係はワンダーランド
  • 鏡よ鏡よ鏡さん
  • 私のなかの僕
  • 今日も笑えていますか?
  • 大きな悲しみが迫ってきたら
  • 好きなことに、まっすぐに!

休憩時間 本当はおもしろい古典和歌

3 自分の今を詠んでみよう

  • 短歌の道具箱
  • タマスケ、吟行に挑戦!
  • あじわう歌会
  • 短歌を発表しよう!

休憩時間 タマスケのお気に入り(4コマ漫画)

おわりに
次の一歩をふみだす地図

短歌入門書の場合、もくじには短歌用語や短歌のつくり方に関する言葉が並ぶのですが、当書のもくじはほとんどそのような言葉とは無縁です。もくじに並んだ言葉から、いったいどんな内容が書かれているのだろうと想像する楽しさも味わえます。短歌そのものというよりは、日常と短歌のつながりが書かれている一冊といえるでしょう。

おすすめのポイント

それでは、当書の特長やおすすめのポイントを順番に見ていきます。

歌人の短歌との出会いを具体的に知ることができる

短歌入門関係の本に多いのは、短歌の基本ルールやつくり方から入るケースが多いのですが、当書ははじめから短歌のルールやつくり方から始まるわけではありません。

まず「短歌、はじめの一歩」と題して、小島なおの短歌との出会いが語られています。どうして「短歌」だったのか、なぜ短歌以外のことを続けずに短歌を続けることになったのか、が詳しく書かれています。

また小島なおが初期のころにつくった具体的な作品も紹介されており、これから短歌を始めようという人にとってイメージを描くことができ、とても参考になると思います。

当書で語られる短歌との出会いと、読者と短歌との出会い(あるいはこれから出会うであろう未来)を比較することもでき、すでに短歌に携わっている人にとっても、これから短歌を始めてみようという人にとっても、興味深い一章だと思います。

日常とリンクする短歌を紹介してくれる

2章は「世界は三十一音でできている」という題ですが、この章では学生のみんなが普段感じていることや悩んでいることなどをテーマとした文章が8つ収められています。著者の小島なおと千葉聡がそれぞれ4つずつの文章を担当しています。

各々の文章のテーマは目次を参照していただければと思いますが、それぞれの文章の中で、テーマにリンクした短歌が紹介されています

短歌が先に紹介され、その後に文章が続くというスタイルではなく、文章の中の要所要所に短歌が引用されているといった印象です。ですから、主は文章のように思いますが、それがかえって、これから短歌を始めようという人にとってはいい効果を生んでいるのではないかと思います。

短歌というものがどういうものかよく捉えられていない人にとって、当然のようにまず短歌が提示されると身構えてしまうかもしれません。しかしこの章の特徴として、日常に直結した文章の中に短歌が登場するという構成になっているため、これから短歌を始めようという人にとってはちょうどいい塩梅になっているのではないでしょうか。

短歌に慣れ親しみ、熟知している人にとっては、文章が主のように見えるこの構成は物足りなく感じる部分もあるのでしょうが、当書の対象者を考えると、このような構成は短歌への入り口を広げる構成であるといってもいいのでしょう。

8つの文章から、読者がお気に入りの文章を見つけることができますし、またその中で紹介されている短歌の中で、自分が好きな短歌を見つけることができるようになっているのです。

歌会の雰囲気を味わえる

3章の中のひとつ「あじわう歌会」という文章では、実際に歌会を行ったときの様子が詳しく書かれています。

参加者は、小島なお、佐々波幸子、千葉聡、寺井龍哉、初谷むい、山下真智子の6名。出された短歌(詠草)は10首。各人持ち点4点をいいと思う歌に割り振って投票します。

最高得点は次の歌となりました。

鼻ひとつひとつの鼻とふれあはす秋のひかりのなかの母子像 (7点)

作者は誰だったのか。作者名はここでは記載しませんので、実際に本の中でお確かめください。

提出された歌一首一首について、どのように読んだのか、鑑賞したのか、どう感じたのか、どういう点がよかったのかなど、参加者の発言がひとつひとつ書かれています。点数の入った歌も、入らなかった歌もそれぞれに意見交換が行われています。

歌会は実際に参加してみないと本当のところの楽しさはわからないかもしれませんが、まだ歌会に参加したことがない人にとっても、この歌会記録の文章は、歌会の雰囲気を味わうのに充分なのではないでしょうか。参加者それぞれの発言は鉤括弧で書かれており、実際の雰囲気に近いかたちでこの文章を読むことができるようになっていることも要因のひとつだと思います。

次の一歩をふみだす地図がある

巻末に見開きで「次の一歩をふみだす地図」が掲載されています。

これは当書を読み終えた後、次に何を読めばいいか、あるいは実際につくった短歌をどこに投稿すればいいかを地図のような形式で描いたものです。

当書以外の短歌入門書や、短歌総合誌、短歌コンテスト、投稿欄、映画、マンガなどの次のステップが紹介されています。

一冊読んで終わりではなく、そこから次にどうつなげていけるか、まさに初期の案内人のような役割を果たしてくれているのです。

まとめ

『短歌部、ただいま部員募集中!』を読むと得られること

  • 歌人(小島なお)の短歌との出会いを知ることができる
  • 日常にリンクする短歌を、肩肘あらずに知ることができる
  • 歌会の文章を読むことで、歌会の雰囲気を味わえる
  • 当書を読んだ後、何を読めばいいか、何をすればいいかの案内がある

当書は、短歌って何だろう、短歌に触れてみたいなと思った人に特におすすめの一冊です。またすでにある程度短歌に触れている人にとっても、新たな角度から短歌を捉えなおすことができる一冊になっていると思います。

書籍・著者情報

書籍情報

著者小島 なお / 千葉 聡
発行岩波書店
発売日2022年4月12日

著者プロフィール

小島なお

歌人。1986年、東京都生まれ。「コスモス短歌会」会員。歌人である母・小島ゆかりの影響を受け、高校生のとき短歌を詠み始める。第50回角川短歌賞受賞。歌集『乱反射』(角川書店)により、第8回現代短歌新人賞、第10回駿河梅花文学賞を受賞。歌集『サリンジャーは死んでしまった』(角川書店)、『展開図』(柊書房)。日本女子大学講師。
(当書著者略歴より)

千葉 聡

歌人・高校教諭。1968年神奈川県生まれ。歌誌「かばん」会員。第41回短歌研究新人賞を受賞。著書に『短歌は最強アイテム』(岩波ジュニア新書)、『90秒の別世界』(立東舎)、『グラウンドを駆けるモーツァルト』(KADOKAWA)など。編著に『はじめて出会う短歌100』(短歌研究社/講談社)など。國學院大學・日本女子大学講師。作曲も手がける。
(当書著者略歴より)

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