短歌をつくりたいけど、つくりかたがよくわからないんだよなあ…。基礎からわかりやすく説明してくれる本があるといいけどなあ…。
「短歌をつくろう!」と思ったときに、つくりかたをどこで学べばいいのでしょうか。
身近に短歌に詳しい人がいれば、その人から教えてもらうのが早いと思います。でも身近に詳しい人がいない場合の方が多いかもしれません。そんなときは入門書から短歌のつくりかたを覚えていくのがいいでしょう。
ただし、入門書とひとくくりにいってもある程度短歌の基礎がある人を対象にした入門書もあれば、まったく短歌を知らない人を対象にしたものもあります。入門書といえど最初の一冊を選び間違うと「短歌ってなんか難しいなあ」ということになりかねません。
そこで今回はまったく短歌を知らない人にとって特におすすめできる本として、高田ほのかさんの『基礎からわかる はじめての短歌』を見ていきたいと思います。
これから短歌を始めるという人はぜひ当書に触れて、短歌のつくりかたを学んでみてはいかがでしょうか。
当書のもくじ
まずは『基礎からわかる はじめての短歌』のもくじを見てみましょう。
はじめに
本書の使いかた
第1章 短歌の歴史とルール
- [ポイント1] 短歌は心の「真実」を表現した詩です
- [ポイント2] 短歌の歴史を知りましょう
- [ポイント3] 音数の数え方を知りましょう
- [ポイント4] 句切れを知りましょう
- [ポイント5] 文語と口語、それぞれの効用を知りましょう
- [ポイント6] 新かなづかいと旧かなづかいの違いを知りましょう
コラム1 短歌と俳句、川柳の違いとは?
第2章 短歌をつくるコツ
- [ポイント7] 焦点を一点に絞りましょう
- [ポイント8] 字余り・字足らずを効果的に使いましょう
- [ポイント9] 句またがりを知りましょう
- [ポイント10] 取り合わせをうまく使いましょう
- [ポイント11] リフレインの効用を知りましょう
- [ポイント12] 対句の表現を知りましょう
- [ポイント13] 表記に工夫を凝らしましょう
- [ポイント14] 倒置法を知りましょう
- [ポイント15] 固有名詞を効果的に使いましょう
- [ポイント16] オノマトペを上手に使いましょう【擬音語編】
- [ポイント17] オノマトペを上手に使いましょう【擬態語編】
- [ポイント18] 比喩を上手に使いましょう
- [ポイント19] イメージがふくらむことばや表現を探しましょう
- [ポイント20] 色を取りいれてみましょう
- [ポイント21] 気になったことを取りいれてみましょう
- [ポイント22] 有名な作品を引用してみましょう
- [ポイント23] 歌に会話を取りいれてみましょう
- [ポイント24] 歌につぶやきを詠みこみましょう
- [ポイント25] 一字空けを効果的に使いましょう
コラム2 短歌にとって大切な二つの感覚とは?
第3章 短歌の作成~推敲のテクニック
短歌づくりの手順
- [ポイント26] 素材集め
短歌づくりとよりよくするためのポイント
- [ポイント27] ことば集め~試作から推敲まで
- [ポイント28] テーマが与えられているときは
短歌づくりとよりよくするためのポイント【添削例】
- [ポイント29] ことばの整え方のコツを知りましょう
- [ポイント30] 体言止めを効果的に使いましょう
- [ポイント31] 月並みな表現に注意しましょう
- [ポイント32] 動詞は二つ以上続けないようにしましょう
- [ポイント33] 上の句と下の句をいれ替えてみましょう
- [ポイント34] “雰囲気イケメン短歌”から脱皮しましょう
- [ポイント35] 外見だけでなく中身でつなげましょう
- [ポイント36] 不要なことばを見極めましょう
- [ポイント37] 場面を映像化して伝えましょう
- [ポイント38] 強調するところと抑制するところを見極めましょう
- [ポイント39] 感情の表現方法を考えましょう
- [ポイント40] 結句の蛇足に注意しましょう
- [ポイント41] 三十一音の外側の世界を想像させましょう
- [ポイント42] オノマトペをいれて臨場感をだしましょう
- [ポイント43]「ドーナツ」の形をイメージしましょう
- [ポイント44] 一首のバランスを考えましょう
- [ポイント45] 序詞は想いを引き立たせるために使いましょう
- [ポイント46] 結句を工夫しましょう
コラム3 短歌フィクション? ノンフィクション?
第4章 短歌が楽しくなる習慣づくり
- [ポイント47] 吟行にでかけましょう
- [ポイント48] 歌会に参加しましょう
- [ポイント49] 短歌日記を書きましょう
- [ポイント50] 短歌を投稿してみましょう
大きく4章に分かれています。第1章では短歌の歴史と基本的なルールの全体像を学びます。第2章で短歌をつくる際のコツを知り、第3章ではさらによりよい短歌をつくっていくためのポイントが解説されています。最後の第4章では、短歌が楽しくなる習慣のつくりかたが紹介されています。全体を通して50個のポイントに分けられており、ポイント別に順番に学んでいくことができる構成となっています。
短歌一首は三十一音という限られた世界ですが、その一首をよりよくするポイントにはたくさんの角度があります。ひとつひとつのポイントが身につくまで繰り返し読むことで、よりよい短歌ができるようになりますし、また短歌を楽しめるようになっていくと思います。
おすすめのポイント
それでは、当書の特長やおすすめのポイントを順番に見ていきます。
50個のポイント
一冊を通して、短歌づくりのポイントが50個に整理されており、読者にとってはポイントごとに参照できるようになっているため大変わかりやすい構成となっています。
また各ポイントは「○○しましょう」といったタイトルとなっており、具体的にどういうところに気をつければいいのかがタイトルを見ただけですぐわかるようになっています。読み返すときにも、タイトルを振り返るだけでどのようなことが書かれていたかが思い出せるように工夫されています。
そして、ひとつひとつのポイントは概ね2~4ページでまとめられていますので、本を開いたときに各ポイントのタイトルが必ずページの冒頭にくるようになっています。ページの途中で節が変わるということがありませんので、パラパラとページをめくったときにも見やすい点もとてもいいと思います。
具体的で身近な実例
それぞれのポイントには実例が紹介されていますが、その実例が実に具体的です。
一般的に例歌は、有名歌人の歌か、すでに出版されている歌集からとられる場合が多いでしょう。しかし当書で取り上げられる実例の多くはそのような歌ではなく、著者が自身の短歌教室などで実際にこれまで携わってきた人の歌が引かれているのです。
つまりプロの歌人の歌ではなく、当書の対象でもある初学者に近い人がつくった歌が実例として取り上げられているところが当初の特徴ともいえるでしょう。
短歌をこれからはじめようという場合、歌にもよりますが、歌人の例歌は少し難しいと感じる場合もあるでしょう。
しかし当書においては、これから短歌をはじめようという人にとっては、自分のレベルに近しい人の短歌に触れることができるわけですから、それらの短歌のいい点・改善点すべてがより身近なものとして具体的にイメージしやすいというメリットがあります。
チェック項目でわかる添削例
第3章は短歌の添削例がたくさん掲載されています。
例えば、「[ポイント42] オノマトペをいれて臨場感をだしましょう」の節においては次のような添削例が示されています。
(原作) リズム取り合わせて合わぬ太鼓の音お囃子いれて練習続く
(添削例)ドンドドン合わせて合わぬ大太鼓お囃子いれて明日へと続く
ここでは3箇所添削されていますが、それぞれについて「Check 1~3」と題してなぜそのように添削したのかがわかりやすく解説されています。
- Check1 オノマトペをいれて臨場感を演出
- Check2 名称を具体的にして歌を鮮やかに
- Check3 印象を深くすることばを選ぶ
各Checkにはより詳しい説明が付されて、原作と添削例とを比べたときにどこがどう変わり、どうすればよりよい短歌をつくることができるのかをひとつひとつ習得できるようになっています。
短歌づくりを継続するための方法が書かれている
短歌は一首つくって終わりというものではありません。つくり続けるということが、いい短歌をつくるためには必要なことです。せっかく短歌をつくり始めたのにすぐやめてしまうのでは、大変もったいないことです。
そこで第4章では、短歌をつくるための機会や場所、習慣づくりが紹介されています。
- 吟行にでかけましょう
- 歌会に参加しましょう
- 短歌日記を書きましょう
- 短歌を投稿してみましょう
自分ひとりだけで短歌をつくり続けていても、なかなか継続することは難しいことです。短歌を通じて仲間との交流を深めてみるのも、短歌を楽しむためにはとてもよいことです。
また直接誰かと会わなくても、インターネットや新聞・雑誌では短歌の投稿も受け付けていますから、そのような投稿媒体に思い切って投稿してみると、反応を得ることができ、もっともっと短歌の楽しさを知っていくことができるのではないでしょうか。
まとめ
『基礎からわかる はじめての短歌』を読むと得られること
- これから短歌をはじめる人にとって、短歌づくりの基礎を学ぶことができる
- 取り上げられている例歌が具体的で身近なものが多く、初学者にとってイメージしやすい
- 添削例の添削理由がチェック項目として書かれておりポイントが習得しやすい
- 短歌を継続するための習慣づくりがわかる
当書は、これから短歌をつくりたいと思った人に特におすすめの一冊です。またすでに実作をしている人にとっても、改めてよりよい短歌をつくるポイントを確認する意味でもためになると思います。
書籍・著者情報
書籍情報
著者 | 高田 ほのか(監修) |
発行 | メイツ出版 |
発売日 | 2021年5月25日 |
著者プロフィール
関西学院大学文学部心理学科卒。テレビ大阪放送番組審議会委員。2015年、未来短歌会に入会。加藤治郎に師事。2016年、ドイツ人作家マティアス・ポリティキ著『アサヒ・ブルース』の短歌を翻案。2017年、第一歌集『ライナスの毛布』刊行。2018年、5年かけて天神橋筋の店主100人の想いを100首の短歌に詠んだ歌集『100首の短歌で発見! 天神橋筋の店 ええとこここやで』が文化庁の協力名義を受ける。企業や大学、カルチャースクールでの講演や講義といった短歌の裾野を広げる活動が、新聞やNHK など多くのメディアで取り上げられ共感を呼んでいる。
(当書著者略歴より)