今日眠るふとんあります明日食べるパンもあります祈りのゆびも
岸原さや『声、あるいは音のような』
岸原さやの第一歌集『声、あるいは音のような』(2013年)に収められた一首です。
眠る前の場面でしょうか。
この歌は、ひとことでいってしまえば”感謝”の歌ではないでしょうか。
「今日眠るふとん」があること、「明日食べるパン」があること、これらは普段当たり前のことのように感じてしまい、それらがあることに対して特段感謝をするということは少ないかもしれません。
しかし、改めて考えてみると、安心して眠る場所があって、三食きちんと食べることができるということは、素晴らしいことではないでしょうか。
あれがない、これがないと、ないものねだりをする人が多いと思いますが、改めて自分自身の今に注目してみると、もっているものはかなり色々とあるのではないかと気づくでしょう。
そういう日々に感謝をすることは人生を豊かにしてくれるでしょうし、心もきっといい気分になると思います。
「祈りのゆび」は、明日へ祈りをささげる指を差しているのでしょうか。眠る前にいいことを浮かべる、日々あるものに感謝する、物事に対する主体の接し方が伝わってくるようです。
ないものではなく、あるものへの意識を改めて感じさせてくれる一首で印象に残ります。
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