雪降れば口を開け待つ 一生をながい動画と思って生きる
くどうれいん『水中で口笛』
くどうれいんの第一歌集『水中で口笛』(2021年)に収められた一首です。
雪が降っている空を見上げて、口を開けている状況でしょうか。
空から降る雪は、まだ地上に落ちておらず、その白さ、軽さ、そしてふわっとした感じと相まって、どこか清潔なイメージがあります。口を開けて待つことは、口の中に雪が入っても構わない、いやむしろ口の中に、はらはらと落ちてくる雪が入ってほしいという期待があるのではないでしょうか。そうであるから「口を開け待つ」なのでしょう。
上を向いて、無限に降ってくる雪片を眺めていると、宇宙の深遠とは何か、自分の存在とは何かに思いが至ることはないでしょうか。「一生をながい動画と思って生きる」は、降ってくる雪を口を開けて見上げている状況から、割と自然に湧き出してきた考えなのかもしれません。
この視点からは、自分の一生を客観的に見ている様子が窺えます。一生を「ながい動画」つまり一本の映画のようなイメージで捉えているのだと感じます。
一本の「ながい動画」であれば、そこには当然うまくいくことも、うまくいかないこともあり、起伏のあるストーリーとなるでしょう。「ながい動画」と思えば、自分の人生をどのようなストーリー仕立てにしてみようかという楽しさもあるでしょう。また同時に、人生を「ながい動画」と客観視することで、たとえうまくいかないことが起きたとしても、”これは動画だから。そんなに思いつめる必要はない”と捉えることもできるかもしれません。
「一生をながい動画と思って生きる」は決して冷めた見方ではありません。自分の人生をより生きやすく、より面白くする捉え方であり、見終えたときに”ああ、面白かった”といえるような動画にしたいという静かな思いも、そこには潜んでいるかもしれません。単に楽観的とか悲観的とかいうひとことでは括れない、結構複雑な思いがここには込められているような気がします。
「ながい動画」のラストシーンには、果たして雪は降っているのでしょうか。想像を掻き立てられる一首です。



