ぴったりに無塩バターを切れるのは「パンおいしいよ」の手紙のおかげ
ほんだただよし『パパはこんなきもち。~こそだてたんか~』
ほんだただよしの第三歌集『パパはこんなきもち。~こそだてたんか~』(2017年)に収められた一首です。
この歌には少し長い詞書がつけられています。
ホームベーカリーでパンを作ることが、料理のできないパパの日課。
切るべきバターの重さは、寿司のシャリと同じ十五グラム。
喜んでくれる人がいると、だれでも職人になれる?
子育ての日々を詠った歌集の中の一首ですが、毎日パンをつくっていると、バターの量を毎回15グラムぴったりに合わせることができるという内容です。
それは繰り返しパンをつくりつづけているから、だんだんと分量の感覚が身についていった結果でしょうが、そもそも毎日パンをつくるという行為は子どもたちの「パンおいしいよ」という手紙があるからこそ継続されているのだと詠われています。
無塩バターの量を毎回ぴったり合わせられるくらいパンをつくりつづけた日々の貴重さ、大切さを感じますし、つまりは家族との長きにわたる時間の豊かさにまで思いは及びます。
食というものは、喜んでくれる人がいると一層おいしく楽しくなるものだと改めて認識させられる一首です。