メールの歌 #8

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メールの短歌

メールにて「連載原稿書き直しのお願い」が来る 胸に重く来る
千葉聡『海、悲歌、夏の雫など』

千葉聡の第五歌集海、悲歌、夏の雫など(2015年)に収められた一首です。

作者は歌人ですから、短歌総合誌などでの連載の依頼を受けている際の歌であると想像します。

一旦は原稿を提出したのですが、その後「連載原稿書き直しのお願い」が出版社からメールで届いた場面です。提出した原稿がすんなり通れば問題なかったのでしょうが、書き直しを依頼されたわけです。

書き直しは喜ばしいものでしょうか。大抵の人にとっては、うれしいものではないと思います。一旦書いたのに、また見直して書かなければならないと考えただけで、気持ちが沈んでしまうのではないでしょうか。

結句の「胸に重く来る」にその心境がよく表れていると思いますが、この「重く来る」は複雑な思いが入り交じった気持ちなのではないでしょうか。単に面倒だなあという一辺倒な思いだけではきっとないと思います。

最初に提出した原稿の出来、なぜ書き直しなのかという思い、書き直さなければならないことに対する負担感、どのように書き直そうかということへの思い、連載原稿のレベルを保つ責任感など…。

「連作原稿書き直しのお願い」がきたたけで、たちまち複雑に絡み合った思いが兆してきたのではないかと思います。これは「メール」で知らされたことも大きく影響しているのではないでしょうか。

もし、書き直しの知らせが電話で行われていたとすればどうだったのでしょう。電話であれば、その場ですぐに相手の担当者に質問することができるでしょう。知らせを受けたときは「え! 書き直し!?」となるかもしれませんが、すぐに質問できるため、その場で感じた重たい感情を解消する方向に向かうことができるかもしれません。疑問をすぐにぶつけることで、重たく響いていた書き直しの連絡が、少し和らいでいく可能性だってあるでしょう。

でも、実際は「メール」で届いたわけです。疑問、質問は返信すればいいわけですが、今すぐその回答がなされるわけでもなく、ある程度待たなくてはいけません。この待っている間というのも、「胸に重く来る」状態がずっと継続したままになるのではないでしょうか。

ですから、この歌においては初句の「メールにて」がかなり重要な役割を果たしていると感じます。「メールにて」だからこその重さがそこにはあるのです。

また「来る」が二回登場しますが、この繰り返しが、メールで届いた書き直しの依頼の重さを表現している一首だと思います。

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