傘の歌 #37

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傘の短歌

雨傘を泥につきさしながら行く何かを君に誓いたき日は
江戸雪『駒鳥ロビン

江戸雪の第四歌集駒鳥ロビン(2009年)に収められた一首です。

「君」とは恋人でしょうか。誓いたいと思えるほどの相手であるので、親しい間柄の人なのでしょう。

「何かを君に誓いたき日」と詠われていますが、具体的に何を誓うのかは明確にされていません。それは読み手にとって明確にされていないだけでなく、主体自身もおそらく「何か」を明確にできずにいるのではないかと感じます。

君に誓いたいという思いはあるのだけれど、何を誓えばいいのか、それははっきりとわからない、そんな状況なのではないでしょうか。

さて、そんな君に何かを誓いたいと思う日に、主体は「雨傘を泥につきさしながら行く」のです。

雨上がりでしょうか、あるいは畦道のようなところかもしれません。泥があるところですから、都会のど真ん中というわけではなさそうです。しかも、突き刺せるくらいの泥ですから、うっすらと泥がある程度ではなく、やはり傘の先が泥に一定の深さ埋まるくらいの場所なのでしょう。

「泥につきさしながら行く」主体の感情はどのようなものでしょうか。

突き刺すとなれば、怒りの感情に結び付けがちですが、この歌の場合は、怒りの感情は感じられず、むしろ迷いの感情や、決めかねているといった印象が強いように思います。

その迷いは「何か」が決定できないもどかしさのようなものかもしれません。

君に誓いたいという思いは、傘を泥に突き刺すという行為の強さに表れているのでしょうが、何度も何度も突き刺すという行為は、「何か」を見つけられないまま求め続けている思いの表れのようにも感じます。

「何か」が明確にされないことで、逆に歌に膨らみが生まれていると感じられる一首だと思います。

泥

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