傘の歌 #15

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傘の短歌

それぞれの記憶を混ぜて傘立ての水受けはなに映し出すかな
佐佐木定綱『月を食う』

佐佐木定綱の第一歌集月を食う(2019年)に収められた一首です。

連作「雷鳴」の中の歌ですが、この一連からは自宅の傘立てというよりは、外出先の傘立てを指しているように思われます。カフェ、公共施設、あるいはコンビニなどに置かれている傘立てを思い浮かべました。

傘立ての水受けの役目は、雨に濡れた傘から垂れる雨滴を受け取ることです。雨に濡れた傘というのは面白いもので、施設に入る際には、そのほとんどが入口付近の傘立てに集約されるのです。共通の傘立てに傘を置くことが好きで好きでたまらないという人は稀でしょうが、多くの人は好悪を考えず、ただ傘を置く手段として傘立てを利用しているでしょう。しかしそのような存在の傘立てだからこそ、さまざまな傘が集まるのです。

傘の一本一本に記憶が宿るとすれば、それは傘の持ち主の記憶が宿るということでしょう。

友人、恋人、家族、学校、仕事、休日、旅行、買い物など、一本の傘にまつわる記憶は人それぞれ違うでしょうし、濃淡も思い入れもさまざまだと思います。

そのような記憶を水受けは混ぜ合わせてしまうのです。そこには、ひとりの人間、一本の傘からでは到底表し得ないほどの、複層的な記憶の混在が生まれることでしょう。

その結果としての水受けは、一体どんな景を映し出すのでしょうか。

人の手を一旦離れた傘だけが集まる場としての傘立て。記憶という言葉が持ち込まれることで、傘立て自体から生まれる物語があるようで、興味を惹かれる一首です。

傘立て
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