傘の歌 #14

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傘の短歌

フラミンゴきれいに足を折りたたみあの日失くした傘かと思う
toron*『イマジナシオン』

toron*の第一歌集『イマジナシオン』(2022年)に収められた一首です。

一本足で立つフラミンゴに、傘の形状を重ねている見立ての歌ですが、ただ単に見立てだけかというとそうでもないようです。

それはフラミンゴが足を折りたたむ動作が描かれているからではないかと思います。また「あの日失くした傘」という表現にも、どこにでもある一般的な名詞としての傘ではない、個人的なものが表れているでしょう。

そのような点から、単にフラミンゴと傘の見た目を重ね合わせただけの歌ではないと感じます。

フラミンゴがきれいに足を折りたたむ姿が、スローモーションのような映像で美しく映し出されるようであり、その光景が傘へとつながります。その傘は「あの日失くした傘」であり、もう取り戻すことができない傘なのです。

失ったものに対する記憶は、時間が経つにつれてやがて美化されていく傾向がありますが、フラミンゴがじっと立つ姿の美しさと溶け合っていくような印象があります。

つまり、この歌において、フラミンゴと傘は見た目が似ているというよりも、もう少し別の共通項、たとえば美しさ、それも見た目というよりも主体が感じる感情としての美しさにおいて、つながっているように感じます。

このようにフラミンゴと傘のイメージが重ね合っていく様が心地よく感じる一首です。

フラミンゴ
フラミンゴ

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